星の子

3.25
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本棚登録 : 1918
レビュー : 289
著者 :
suenaganaokiさん  未設定  読み終わった 

主人公はどこかとぼけていて、作品全体も明るいのに、名状しがたい不気味さがそこはかとなく漂う。
それが今村夏子の作風なんでしょうね。
衝撃のデビュー作「こちらあみ子」、完成度の高さに脱帽させられた「あひる」、「こちらあみ子」に併録された「ピクニック」「チズさん」も、それぞれの要素に濃淡はあれど、そんな作品でした。
得難い作家です。
本書の主人公は、あるきっかけで新興宗教に入信することになった両親を持つ女の子。
女の子の1人称視点で、物語は進みます。
両親は聖水を飲むだけでなく、聖水を浸したタオルを頭に載せて暮らしています。
家族で教団の教会に行って、集会に参加することもあります。
母の弟が家族を脱会させようと一計を案じます。
なんて書くと、「名状しがたい不気味さがそこはかとなく漂う、なんて嘘。もう立派に不気味。っていうか怖い」とムキになって食って掛かる人もいそうです。
まあまあ、早合点しなさんな。
あのね、上に紹介したようなことが、無垢な女の子の視点で淡々と語られるのです。
正邪善悪の判断は一切なし。
分別のついた大人の読み手としては、書かれていないことがあまりに多い。
ぅでもね。
この「書かれていない」ということが、今村夏子の作家としての稀有な才能の発露なの。
凡百の作家は、書いてしまうんだ。
だって書くのが作家だもの。
でも、今村夏子は書かない。
書かないで、読者の想像力を喚起する。
こうやって簡単に書いているけどね、なかなか出来ることじゃない。
やっぱり凡百の作家が同じことをしたら、それは単なる「不足」と指摘されるのがオチだもの。
ラストも素晴らしい。
ここからややネタバレだから気をつけてくださいね。
いいですか。
いきますよ。
このラストの場面は、家族が同じものを見ているようで、全く違うものを見ているという暗喩だと思いました。
主人公の「私」はやがて巣立つのでしょう。
心に沁みる、切ない場面です。
うん、素晴らしい作品です。
ただ、「こちらあみ子」にあったような、巧まざるユーモアが足りない気がしました。
ファンは欲張りなんです。

レビュー投稿日
2018年8月19日
読了日
2018年8月19日
本棚登録日
2018年8月19日
2
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