暴力シーンの迫力ある描写に圧倒されました。
凄惨で理不尽な暴力を、一切の感情を交えずに、微細に描く。
時に眼を背けたくなるほどの迫真性を帯びています。
いや、見事というほかありません。
東京から青森に越してきた中3の歩が主人公。
クラスには、リーダー格の晃を筆頭にやんちゃな男の子たちがいます。
歩はすぐに打ち解けますが、物語はここから不穏さをまとっていきます。
その不穏さの火元は、男の子たちが興じる遊び。
不良の先輩たちから受け継いだらしい遊びには常に暴力の影が付きまとい、時にその片鱗を現します。
物語は単線的に進みますが、読者はこの不穏さに憑りつかれて、ページを繰る手が止まらなくなります。
そしてラスト。
ついにその暴力があられもない姿を現し、歩をはじめ登場人物たちを喰うのです。
もちろん、これは比喩。
ただ、飼いならしていたはずの暴力が、当の飼い主に襲いかかることもあるのだと。
私はそのように読みました。
それにしても、作者の描写力は半端ではありません。
いくつかインタビューを読んだ限りでは、著者は大学時代の一時期に読書に夢中になった程度とのこと。
読書量は並以下ではないでしょうか。
それでも、これだけ豊富な語彙を持ち、言葉を的確に運用できるのですから、これこそまさに天性の才能というものでしょう。
芥川賞選評で島田雅彦が「言葉にコストを掛けている」と述べていました。
言い得て妙。
ショートピース並みのガツンと来る小説を読みたい方は、ぜひ。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2018年9月11日
- 読了日 : 2018年9月11日
- 本棚登録日 : 2018年9月11日
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