商店街はなぜ滅びるのか 社会・政治・経済史から探る再生の道 (光文社新書)

3.52
  • (34)
  • (116)
  • (108)
  • (19)
  • (8)
本棚登録 : 1037
レビュー : 132
著者 :
suenaganaokiさん  未設定  読み終わった 

疲弊する商店街を活性化しようという時、それが伝統的な存在であるということが議論の前提になっていると思われますが、現在の商店街が決して伝統的な存在ではないということが、本書を読んで分かりました。
たしかに商店街の起源は江戸時代に見ることが出来ますが、現在の商店街の多くは戦後に形成されたもの。東京でさえ設立時期が昭和20年以前の商店街はわずか6%に過ぎないとのことです(平成19年の東京都商店街実態調査)。
商店街の疲弊の原因を、郊外型ショッピングセンターの乱立に求める議論が目立ちますが、これも一面の理解に過ぎないことが分かります。むしろ、商店街側が政治に過大な保護を求め、自ら現在の惨状を招来してしまった面もあるようです。
江戸時代には丁稚奉公の奉公人が商売を引き継ぐことも珍しくありませんでしたが、近代家族化の波が自営業にも押し寄せたことで、商店主は自らの子どもに継がせる意外の選択肢はほぼ持ち得ませんでした。そのような硬直化した事業承継の在り方が、現在の後継者難の主因と著者は見ています。
さらには子供に承継させるため、将来性のあるコンビニに業態転換する商店主も少なくありませんが、これが商店街の衰退に拍車をかけているのは、皮肉としか言いようがありません。
このように本書を紹介すると、著者はまるで商店街を敵視しているように感じるかもしれませんが、そうではありません。
特に冒頭の場面は印象的です。著者は東日本大震災発生後、宮城県石巻市に調査に訪れますが、商店街では大勢のボランティアが復興活動に尽力してました。一方で、ショッピングモール地区にはボランティアの姿がほとんど見当たらない。
「商店街という場だからこそ、本来出会うことのない雑多な人たちが交差する。だからこそ、災害時に商店街の『魅力』が現れたのではないだろうか」
そんな著者の主張には、商店街の再生への期待がにじんでいます。
実際、終章で著者は商店街の再生について提言しています(表題は「再生」ではなく、「商店街の何を引き継げばよいか」とかなり控えめですが)。
中でも注目したいのは、次のような提言です。
「地域単位で協同組合が商店街の土地を所有し、意欲ある若者に土地を貸し出すとともに、金融面でもバックアップするという仕組みがつくられるべきだろう」
課題はたとえば新卒で官公庁や企業への就職にしか目が向いていない若者に、説得力を持って商店街への就職を「新たな選択肢」として提示できるかどうか。個人的には今からでも決して遅くはないと思っています。

レビュー投稿日
2013年1月3日
読了日
2013年1月3日
本棚登録日
2013年1月3日
1
ツイートする
このエントリーをはてなブックマークに追加

『商店街はなぜ滅びるのか 社会・政治・経済...』のレビューをもっとみる

『商店街はなぜ滅びるのか 社会・政治・経済史から探る再生の道 (光文社新書)』のレビューへのコメント

まだコメントはありません。

コメントをする場合は、ログインしてください。

いいね!してくれた人

ツイートする