空飛ぶ馬 (創元推理文庫―現代日本推理小説叢書)

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本棚登録 : 3680
レビュー : 499
著者 :
suenaganaokiさん  未設定  読み終わった 

恥ずかしながら北村薫さんを読むのは本作が初めて。
ミステリーと言えば、殺人事件が起きて、謎に挑む刑事ないしは探偵が出てきて…というお話を想像しますが、全然そんなことはありません。
日常生活の中で起こり得る(起こらないけど)不思議な出来事を描き、その謎を解いていく「日常ミステリー」なんです。
主人公は女子大生、探偵役は春桜亭円紫さんです。
女子大生は変に女女していなくて、そこが逆にとてもリアル(北村薫は当初は覆面作家で、本物の女子大生が書いているのだと勘違いした人が続出したそう。さもありなん)。
それに何と言っても円紫さんです。
個人的に落語が大好きですから、この設定は堪りません。
本筋とは関係ないですが、円紫さんの高座や落語に関して薀蓄を傾ける場面が、私としては読みどころでした。
たとえば、「鼠穴」という演目があります(私は談志のしか聴いたことがありません)。
田舎から兄を頼って出て来た弟が、たった3文の銭を渡されて、そこから身を立てていく噺。
3文を6文にし、6文を12文にして…と財産を増やしていくわけですが、円紫さんは「その間にだって食べるものは食べるだろう。別に金があるなら、三文から始める必要もない」と疑問を挟みます。
いや、言われてみれば、なるほど、その通りです。
落語ファンには、いろいろ気付かされることが多いのではないでしょうか。
もちろん、謎が提示されて、それを快刀乱麻で解決し、大団円に至るというミステリーの醍醐味は十分に味わえます。
パターンは概ね同じでも、1話ごとに趣が異なるのも魅力。
たとえば、「赤頭巾」はシリアスで読後感も重いですが、表題作「空飛ぶ馬」は気持ちが晴れやかになる快作です。
個人的には、「砂糖合戦」が気に入りました。
冒頭にカッコ書きで「起こらないけど」などと書きましたが、これは十分に起こり得る日常ミステリー。
卑小な人間の些細な悪意について書いていて、「あるある」といちいち得心しながら読みました。
いろんな愉しみ方が出来る、実にお得なミステリーと言えましょう。

レビュー投稿日
2017年7月16日
読了日
2017年7月16日
本棚登録日
2017年7月16日
3
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