トラジャ JR「革マル」30年の呪縛、労組の終焉

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  • 東洋経済新報社 (2019年9月20日発売)
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JRではいまだにこんな歪な労使関係がまかり通っているのかと、唖然としながら読みました。
わが(筆者は北海道出身、在住)JR北海道では、経営側が労組の言いなり。
たとえば、乗務員らのアルコール検知器を使っての検査も組合側の抵抗(!)で義務化できず、実現したのはようやく2012年になってからです。
ちなみにこの労組とは、JR北海道労組。
組合員が他の組合に属する組合員と口を利くことを許さず、結婚式にも出席するのはご法度というのですから、あまりにも偏狭です。
世間の常識とかけ離れた組合と言わざるを得ません。
もっとも、歪んだ労政を転換しようとした経営者もいます。
しかし、労組の抵抗に遭い挫折。
しかも、わずか3年の間に2人の社長(1人は元社長)が自殺に追い込まれました。
ぜんたい、社長(1人は元社長)が2人も立て続けに自殺する会社なんてどこにあるでしょうか。
百歩譲って、JR社内だけのことならまだいいです。
所詮はコップの中の水の話。
しかし、これがこと「乗客の安全」に関わってくるとすれば到底、看過できません。
実際、JR北海道では近年、石勝線で特急「スーパーおおぞら14号」の脱線火災事故をはじめ、数々の事故や重大事案が続きました。
この背景に、歪な労使関係を背景とした杜撰な安全管理体制があったことを、本書は告発しています。
さらに、JR北海道では、組合員によるATS(自動列車停止装置)破壊、覚せい剤を使用しながらの運転などが明らかとなりました。
開いた口が塞がりません。
JR東日本も相当に異常です。
特に、JR東労組を脱退した組合員に対する嫌がらせには、怒りを通り越してあきれ果てました。
この元組合員が制服に着替え、電車に乗務しようとすると、JR東労組の組合員たちが運転席に一番近い車両に乗り込み、「この野郎、こんなところでブレーキをかけやがって」「ヘタクソ、危ねーな」などとヤジを飛ばすのです(一部は現在もyoutubeにアップされています)。
さらに、この元組合員の証言によると、対向車線から来た電車にハイビームで2、3回パッシングされたり(危険な行為!)、駅構内の信号機を隠されたりしたこともあったそうです。
乗客の安全などそっちのけ、大事なのは組合のメンツや保身なのでしょう。
実は、自分は新聞記者として札幌市の小・中学校における国旗掲揚・国歌斉唱の問題を約1年間にわたり取材した経験があります。
国旗掲揚・国歌斉唱の是非はこの際脇に置いておくとして、その過程で何度も教職員組合を取材しました。
実は、「子供のことなんて考えていないのではないか」と疑問に思うことがしばしばありました。
組合の論理が、真に大切な子供たちに優先するのですね。
JR北海道労組やJR東日本労組、さらにはその上部団体であるJR総連には、極左暴力集団で殺人をも厭わない革マル派が相当浸透しており、本書の大半はそこに割かれています。
かなり複雑に入り組んでいるので理解するのはなかなか難しいですが、公的企業であり人命を何よりも優先すべきJRに、こんな危険な人物たちが入り込んでいると考えると慄然とします。
労働者たちが安心して働くためにも組合という存在は必要ですが、不健全な労使関係はただちに是正し、真に「お客様のためのJR」に生まれ変わってほしいと切に願います。
読む価値あり!

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2020年1月21日
読了日 : 2020年1月21日
本棚登録日 : 2020年1月21日

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