「20代で得た知見」というタイトルですが、「20代のうちから人生100歳時代を見据えたキャリアパスを描くべし」、といった類の本ではなく、筆者が体験した人生の中で、また様々な20代の人たちにインタビューを行った中で見つけた、「忘れがたく心を動かされた断片」をまとめたエッセイ集・詩編になります。
青春時代と同じぐらい、20代は悩み患いの多い時代です。
自分のやりたいことは何なのか、進むべき道はこれでいいのか、自分は何者にもなれないのか、結婚や出産が人生のゴールなのか……。人生はまだまだ長く不確実であるにもかかわらず、20代のうちに下さなければならない決断は、それに不釣り合いなほど多いものです。
この本は、みんなが見過ごしてしまうもの――考えてはいるけれども言葉にできず、心の奥底に滓として溜まってしまうもの――を、筆者の感性を通して言葉にする本です。
そのため、刺さらない人には一切刺さりません。詩集や自己啓発本の面白さというのは、自分のバックボーンと筆者の感性の噛み合わせ次第のため、それは致し方ないことだと思います。
この本を読んで思ったことを一つ。
人は誰でも上記のような葛藤を抱えながら世界と折り合いをつけています。それが故に、自分が抱える孤独や幸不幸なぞは、他の人間も当たり前のように経験しています。むしろより凄惨な孤独を味わった人もいれば、幸不幸の急転直下を経験した面白い人物もいます。上にも下にも実力者だらけであり、自分の矮小さを思い知ることでしょう。
ですが、そうした取り柄も特徴もない人間が感じる、些細な気の迷いや感情の揺れを拾い集め、「当たり前の中から生まれたその人特有のエモさ」へと醸成させるのがこの本です。その一般人のエモさを一般人の感覚で触れ、心が揺れればイイネして、揺れなければおしまい、そんな読み方が適切かと思います。
最後に、私が面白いと思ったものをメモとして記載しておきます。
購入される前に本のテイストを確認したいという方も、是非活用してみてください。
過剰こそが唯一の正義…根暗でもパリピでもインテリでもオタクでも、極端を突き詰めれたほうがうまく行く。世界を中心にせずに己を中心に据える。そして、どちらに振れられない人は、「中途半端」に特化すればいい。
性分は直すのではなく引き受ける…優柔不断な性分を直すより、何についてなら徹底的に手は抜かないかを決め、それにリソースを割くのがいい。どうすればもっと楽に事を運べるかに特化して、上手くできないことは上手くできる人に任せれば、他人のためにもなる。欠点は欠点ではない。
女は生き様である…年上の男からすれば年下の女は金も知識も経験も自信もない。そんな彼女に何らかの幻想を抱かせて落とすのは簡単。我々は年齢差恋愛に幻想を抱きすぎである。そこにあるのは経験格差による幻想。そんな女に足りないのは度胸。美貌は劣化するが、生き様は消えない。一方、そんな男に足りないのは愛嬌なのかもしれない。
流行より百年先も成立するクラシック…移ろいやすい流行などはもう追わなくていい。百年先も成立するクラシックをご自身なりに確立してしまったほうがいい。
「夢などなくとも、人はならざるを得ないものになる。そして、ならざるを得ないものを受け入れるしかない」
不条理な世界と戦うための武器一式…現実を戦うための武器は次のようなものではないか。
1 自分は何が好きか知る
2 何が売れて、何が必要とされているのかを知る
3 何が売られていないか、なにが欲しいかも知る
4 今何を作れるのかを知る。それに向けて何を身につければいいかも知る。
退屈を殺す…「それについてはもう知っている」と思うとき、人間は退屈する。「私はそれについてなにも知らない」と一歩下がれば、私達は退屈しなくて済む。
雑談…雑談の延長線上に、仕事がある。あったら良いな、できたら面白いの延長線上に、仕事がある。周りに軽率に軽い話を振りまき、言いふらしておいた方が、いざその話になったとき、あなたの名前を周囲が挙げやすくなる。黙っているより訴えたほうが、機会は増える。
良いものを見つけたら良いと叫ぶといい
神聖にして不可侵な閉架…弱点は、突っついてもいいけど突き刺してはだめなのです。美点は、触れてもいいけど、「こうあれ」と呪いをかけてはだめなのです。
地下アイドル…地下アイドルグループに、20代で得た知見を聞いたところ、「いきなりやってくる人は、いきなり去って行く」と答えた。ものすごい愛をいきなりぶつけてくる人はそれが同じ量帰ってこないと分かると、すぐにいなくなるという。全力で愛してると叫ぶことは、全力で愛してくれって意味であり、自分は愛されて当然だと思っている。
女の怒りと、男の怒りの違い…女は、今怒っていることから過去へと話が遡及する。過去怒ったことはその場では怒らず、怒りが溜まったら、満額で決済する。
男は、起こってもその場限りで、絶対的に相手に非を認めさせることができれば、今日はそれでよしとする。男は、怒りはその場で都度、少額決済する。
どちらかを選ばなければならないとき…究極の選択を迫られたとき、ぜひ思い出していただきたいことがあります。それは、「自分が選んだ選択とその結果を心から受け入れたとき、かつてのその選択は判断時に遡及して、どちらを選ぼうが正しい選択になる」ということ。導かれた結果すべてを強く受け入れることで初めて楽になる。
- 感想投稿日 : 2023年6月19日
- 読了日 : 2020年11月15日
- 本棚登録日 : 2023年6月19日
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