バルザックのシビアさは、鳩尾に強烈に決まる。
「ゴリオ爺さん」に打ちのめされてから10年以上、バルザックを敬遠して来たのだけど、機会があって本書を手に取った。
やはりキツい。
しかも痛みが後まで残る。
最後の一編、「柘榴屋敷」のやるせない母の最期に胸が詰まりながらも子供達に希望を持って読み終えたのだけど、他の小説の中で姿を現すと哀れな末路を辿っていると後書きに書かれていて、呻きながら床に崩れ落ちたいくらいの気持ちになった。
もうやめて!
しかし、上手い。
どうしてこんな悲惨な結末に、とため息をつきながらも、どこかで納得させられてもいる。
人物について、外からも内からも筆を尽くす綿密な描写は見事。
読み終わってしばらく経っても喉の奥につかえるものはあるけれど、読んで良かった。
「知られざる傑作」「鞠打つ猫の店」は素晴らしいと思うし、物語もドラマチックで派手だ。
けれどこの中で私が一番好きなのは、割に地味な「ピエール・グラスー」。
ありがちな話かと思いきや、最後ににやりとせずにはいられない。
天才を上手く描くよりも凡人を上手く描く方が難しいのではないかと思うが、これは秀逸。
ところで、「絵画と狂気篇」というタイトルの割に、絵画全く関係なくない…?という作品が数編あったのだけど、どうなんだろう。
面白いまとめ方だなと思って手に取ったので、そこは少々拍子抜けした。
絵画に関する作品だけで、充分一冊成り立ったと思うんだけど…。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2014年3月20日
- 読了日 : 2014年3月20日
- 本棚登録日 : 2014年2月20日
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