- エージェント17 (ハヤカワ文庫NV)
- ジョン・ブロウンロウ
- 早川書房 / 2025年1月8日発売
- 本 / 本
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面白かった!読んでるだけでアドレナリン出ちゃう!
最高の腕利きスパイ、17。
冒頭から大音量の効果音つき(私の脳内で)のアクションが繰り広げられ、そこに小粋な17のコメントがちょいちょい挟まるので、引き込まれずにはいられない。
ナンバーを得た歴代のスパイで唯一生き残り姿を消した16の殺害命令を受け、実行しようとする現在軸と並行して、17の過去も語られる。
ドライさとウエットさのバランスが絶妙!
裏にある大事は予想がつくものではあるのだけど、どう決着がつくのか気になって一気読みだった。
17はもちろん、周囲の人々の描き方もとても良い。
結末になるほど、と納得したのも束の間、解説によると続編があるのーーーー?!?!
このラストの後でいけますーーーー?!?!
気になるので、ぜひそちらも翻訳刊行してほしい。
2025年4月21日
- この部屋から東京タワーは永遠に見えない
- 麻布競馬場
- 集英社 / 2022年9月5日発売
- 本 / 本
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読んでいる途中でTwitterなどで書かれたものと知り、納得。
その形が一番合っている。
話が変わってもトーンがずっと同じなので、間を置いてバラバラに読む方がいい。
何度も今年で30、という言葉が出ていて、その前後の読者が共感できる作品だろうと思う。
今の私には、肥大化した自意識を持て余しているこの感じ、面倒くさいけどちょっと可愛くすらある。
面倒くさいけど。
「大阪へ」と「大阪から」が良かった。
2025年4月18日
- 日本児童文学: 今、少年詩がおもしろい (2025年3・4月号)
- 小峰書店 / 2025年3月7日発売
- 本 / 雑誌
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特集は少年詩。
座談会、論考、エッセイと盛りだくさん。
様々な詩人・詩集が挙げられていて、少年詩を読みたいとは思うのだけど、なかなかうまく出会えずにいえういる私にうってつけだった。
短編「じゃないほうのふたり」(高村有)、日本児童文学学校最優秀作品の「ユラユラ・フフフ」(いけだけい)もとても良く、何度も読み返したくなった。
2025年4月17日
- 子供はみんな天才人類学者 (神奈川大入門テキストシリーズ)
- 小馬徹
- 御茶の水書房 / 2019年3月27日発売
- 本 / 本
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子どもの話も人類学者の話も、具体的なエピソードが多く読みやすい。
冒険家とは異なる人類学者の立ち位置の話が特に興味深かった。
2025年4月15日
- かわいい子ランキング (ほるぷ読み物シリーズ セカイへの窓)
- ブリジット・ヤング
- ほるぷ出版 / 2022年8月25日発売
- 本 / 本
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目立たないでいたいのに、匿名で流された学校の「かわいい子ランキング」で一位にされてしまった子、常に全て一番であるように努力しているのに二位にされた子、一位の子の親友でランク外にされた子の3人を中心にした物語。
家庭環境も考え方も異なる女の子たちは、時にぶつかりながらランキングを作った犯人を探すのだけど、次第に自分自身も周囲の人も、これまで見えなかった/見ようとしなかったところに気づいていく。
終盤の展開が予想外、かつ見事で胸に沁みた。
登場人物が多面的で、男の子たちについても良い悪いだけで括っていないところもとても良い。
10代の子に読んでほしい良作。
2025年4月14日
- 平等について、いま話したいこと
- トマ・ピケティ
- 早川書房 / 2025年1月17日発売
- 本 / 本
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身構えていた難しさはなく、すいすいと読めた(訳も良かった)。
立つところの違う二人なので、質問と回答をし合うことでそれぞれの意見が読者にもはっきりわかるのがまた良かった。
左派・リベラルはトランプやルペンを非難する前に省みる必要がある、というところは特に、その辺りの信条の人々にぜひ読んでほしい、私自身も気づいていなかった痛いところを突かれた気持ち(気づいていなかったことも含めて)。
2025年4月8日
9歳娘に勧めてもらったシリーズ。
雨が降り、床ではなく草の生えている本屋、ぽこぽこ生えて椅子の代わりになるキノコ、走り出すガラスの汽車……。
一つ一つを想像しながら読むのがとても楽しい。
丁寧な比喩がたくさんで、文章自体を読むのも楽しかった。
中盤からの展開は新鮮さもあってよかった。
続刊も読みたい。
2025年4月1日
- コミュニケーションの準備体操 (岩波ジュニアスタートブックス)
- 兵藤友彦
- 岩波書店 / 2024年10月16日発売
- 本 / 本
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コミュニケーションとは上手に喋ることではない、というところから始まる、若い世代から上の世代まで皆に通用するコミュニケーションのまさに「準備体操」。
言葉が関わる前の段階から、というのがユニークだと思ったのだけど、同時に納得もできた。
たくさんの体操が紹介されているので、やってみたいな。
2025年3月31日
- アイヌもやもや コミックエッセイ 見えない化されている「わたしたち」と、そこにふれてはいけない気がしてしまう「わたしたち」の。
- 北原モコットゥナシ
- 303 BOOKS / 2023年12月12日発売
- 本 / 本
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アイヌの人々が現在どういう状況にあるのかを知りたいと思っていたので、ドンピシャな一冊だった。
どういう差別があるのか、どういう環境にいるのか、漫画と読みやすい文章で書かれていて、とてもわかりやすい。
他の属性のマイノリティへの差別にも通じるところも多く、それはそれとして心に刻むし、でもだからといってアイヌの人々に対してのことを他のことと一絡げにもしてはいけないと思う。
中学生くらいから充分読める内容なので、広く読まれてほしい。
2025年3月31日
- あの子の隣で待つ春は (文研じゅべにーるYA)
- 上田聡子
- 文研出版 / 2025年3月7日発売
- 本 / 本
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立ち止まっていた二人の中学生が出会い、支え合いながら歩き出す姿を丁寧に描いた作品。
心情が細やかに書かれていて、二人が目の前で息をしているようだった。
出会いのきっかけがラジオなのがまた素敵!
金沢の風景も鮮やかで、心地よい風を感じる。
終盤の展開が意外性もありつつ粋で、胸が痺れた。
作者の眼差しの温かさに、読者もそっと背中を支えてもらっているような気持ちになれる。
色んな世代に読んでほしいけれど、やはり特に十代の子に手渡したくなる作品だった。
2025年3月28日
- 終わっていない、逃れられない 〈当事者たち〉の震災俳句と短歌を読む
- 加島正浩
- 文学通信 / 2024年10月15日発売
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「雑食の蛸であるゆゑ太すぎる今年の足を皆畏れたり/梶原さい子」
東日本大震災を詠んだ作品を、「平時において研鑽された〈よい歌〉を生み出す技法や基準が、災害時において機能しなくなったとき、俳人/歌人はどのように句や歌を詠むのか。」という視点から見た評論。
背景も非常に丁寧に書かれており、とても真摯な評論だと思う。
俳句/短歌の評論としても、東日本大震災を考える一冊としても、読まれてほしい本。
「悼花火おおおお涙に声の追いつかず/五十嵐進
黒き袋は土のなきがら入れられて仮仮置き場に置かれてゐたり/本田一弘」
2025年3月27日
- イスラエルについて知っておきたい30のこと
- 早尾貴紀
- 平凡社 / 2025年2月13日発売
- 本 / 本
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とてもわかりやすいので、広く読まれてほしい。
パレスチナで起きていることは、宗教対立ではない、ということ。
イスラエルが武器の性能をパレスチナで「デモンストレーション」し、各国がそれを見て購入を検討するなんて、どこまでグロテスクな話だろう。
虐殺も植民地主義も終わらせないと。
2025年3月24日
- くらげのパポちゃん (講談社の創作絵本)
- かこさとし
- 講談社 / 2025年2月5日発売
- 本 / 本
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かこさとしさんの文章に、かこさんの孫の中島さんが絵を描いた作品。
かこさんの言葉はもちろんなのだけど、中島さんの絵もとてもとても良い。
戦争の只中を書いたものではなくとも、戦争が奪うものの大きさ、その残酷さが伝わる。
作品全体を包む優しさが、平和への祈りを一層感じさせた。
2025年3月23日
ひえええーーーおっもしろ!!!!!
山の牧場で暮らす寡黙な兄の元に、明るくて人気者だった弟が帰郷してくる。
二人はある秘密を抱えていた、というあらすじから陰鬱でウエットな作品を想定していたのだけど、文章がカラッとしていてとても読みやすい。
そして構成の上手いこと!!
途中で秘密が明かされた時には、その絶妙なタイミングに叫び出したいほどだった。
訳も非常に良くて、1/3くらい読んだところで他にどんな訳を手がけている方かな、と略歴のページを開いたところ…隣の解説の、結末ネタバレが目に入ってしまった…くーーっ!
でも、結末がわかっても読むのをやめる気には全くならない面白さ!
いやー、ラストまで見事!
人の描き方のうまさよ…。
今年のマイベストに入ること間違いなし。
2025年3月21日
- ミッチェル家とマシンの反乱 ブルーレイ&DVDセット [Blu-ray]
- マイク・リアンダ
- Happinet / -
- 本 / 映画
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我が家のどストライク!
みんなで爆笑しながら見ました、いやー楽しい時間をありがとう!
2025年3月19日
- 哀しいカフェのバラード
- カーソン・マッカラーズ
- 新潮社 / 2024年9月26日発売
- 本 / 本
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マッカラーズはどの作品もいいなぁ…。
報われない三角形は痛ましくて愛おしい。
山本容子さんの版画がぴったりだった。
2025年3月18日
- フェローシップ岬
- アリス・エリオット・ダーク
- 早川書房 / 2024年12月4日発売
- 本 / 本
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性格も生き方も異なる老年の女性二人。
幼い頃から今までずっと親友だった彼女たちにも、それぞれ言わずにいたことがある。
二人と、そこに飛び込む若いシングルマザーを中心に、丁寧に描かれた長編で、社会や家庭で女性が被る理不尽や搾取についてはきっと描かれるのだろうなと読む前から思っていたのだけど、更に「土地は誰のものか」という視点があったのも良かった。
出来すぎていて私の好みから少し外れはするが、ラストがいい。
2025年3月17日
- 日直もがんばってる ジュニア版 (青空小学校いろいろ委員会 10)
- 小松原宏子
- ほるぷ出版 / 2024年9月12日発売
- 本 / 本
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良かった…泣きました…。
シリーズどの巻も良いのだけど、今作は特に主人公たちに親近感湧いたのもあって、私の心の小さいのだけど頑固なくすみを洗い流してくれた気持ち。
これまでの主人公は、どこかいわゆるキャラの立ったところがあり、主人公になるのも当然だった。
今作の2人は目立つタイプではない(目立たないことの理由はそれぞれ違うのだけど)。
でも、パッと見てすぐ印象に残るわけではなくても、一人一人みんな違っていて、それぞれ良さや面白さがあることを、説教じみることなく上手く物語に織り込んでいて見事だった。
ラストがほんとに良かったなぁ…読んで良かった!
2025年3月13日
- 邪悪なる大蛇
- ピエール・ルメートル
- 文藝春秋 / 2024年7月22日発売
- 本 / 本
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うわーー!めっちゃルメートル!私の好きなルメートル!これが最後のミステリだなんて!!
63歳の女性殺し屋、という設定の面白さにわくわくしていた冒頭は、ジェットコースターの安全バーを下ろした時の気持ちだった。
これから怖くて楽しい時間が始まるぞ、と思っていたら、動き出す寸前に「このジェットコースターのレールは外れている箇所がございます」とアナウンスが流れ、えっ?!と思っている間に動き出してしまう。
ちょっと待って!どこかで落っこちるじゃん!助けて!!と心中叫びながらの読書、こんな体験なかなかない。
そうして迎えたラストがねえ…!
思いがけないものだったけれど、読んだらもうこれしかない。
前書きで、現実は理不尽に溢れているんだからフィクションもそれでもいいでしょー?と挑発したルメートル、確かに理不尽に溢れた作品だった。
でも、理不尽に翻弄され、踏みつけられることが不当だと告げてくれるのもまたルメートル作品で、私はそこがまさに好きなところなので、今作でもそれに触れられて満足。
満足…だけど、えーん!やっぱりミステリも書き続けて欲しいよう!
2025年3月12日
- 犬散歩めんきょしょう (新選創作どうわ)
- 古田足日
- 偕成社 / 1988年1月1日発売
- 本 / 本
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小学生の頃、大好きで大好きで何度も読んだ作品。
久々に読むと、子どもたちの気持ちが実感として感じられたのは自分が子どもの頃と同じだけれど、今は親の立場でも同時に読むこととなり、なかなかに打ちのめされた…。
古田さんはどの作品も、大人にはきっちりと釘を刺していく。
私の中にずっと残る子どもの部分では古田さんの作品に支えてもらいながら、大人の私は受け止めて、省みなきゃ。
2025年3月23日
- 保健委員は恋してる (青空小学校いろいろ委員会 1)
- 小松原宏子
- 静山社 / 2021年9月7日発売
- 本 / 本
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9歳娘に勧めてもらって読んでいる委員会シリーズ、刊行順じゃなくて大丈夫だと娘に言われたので、1巻の今作の前に4冊読了済み。
今作も良かった…とても良かったよ…。
表に見えるものが全てじゃない、というのはシリーズ通じて描かれている、胸に沁みるメッセージ。
この子は実はこう思ってるんだよねと先に読んだ内容を思い出して楽しむこともできたので、シリーズ全巻読んだ後にまた全て再読したい。
絶対楽しい!
2025年3月11日
- 西遊記事変 (ハヤカワ・ミステリ)
- 馬伯庸
- 早川書房 / 2025年1月8日発売
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おっっっっもしろかったーー!!!
「西遊記」を土台にした、なんとお仕事小説。
李仙人は観音と共に、玄奘の旅の試練を用意する仕事をすることになるが、派閥争いやら口を出すお偉方やらつけ込もうとする取引先やらに翻弄されて息つく暇もない。
そのうち何やら過去の隠された闇に勘づき始めてしまう。
お偉いさんのご意向は察しろ、でも知りすぎると身の危険!
経費精算も終わらない!
李仙人は無事に出世できるのか?!
とこうですよ!やーー面白かった!
「西遊記」については、知っていればいるほど楽しめるのだろうけど、日本のドラマの記憶がうっすらあるくらいの私でも充分ついていけた。
どうなることかとと思ったけれど、ラストが最高に粋!
いいなーー!
バディ最高!
伝わる作者の思いもとても温かく、単なるおふざけではない、深みのある良い作品だった。
2025年3月6日