A Pale View of Hills

著者 :
  • Faber & Faber (2010年2月25日発売)
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本棚登録 : 51
感想 : 5
4

遠くまで続く丘陵が薄明かりの中霞んで見える。タイトル通り、つかみ所のないあいまいな過去の記憶を、主人公がたどっていく物語。純文学ってこういうものだよなあ、としみじみ感じます。

英語で読んでいるのに、長崎時代のストーリーは、私の脳内では小津安二郎監督による映像で上映されていました。小津安二郎の普遍性と、カズオ・イシグロの日本研究と描写力のなせる業でしょうね。

以下ネタバレですが、
特筆すべきは
・娘の自殺の理由
・長崎時代のその後
・英国に来た理由
が全く描かれていなかったこと、
・無意識の中で義父やサチコの行動に追随していること
・「縄」のエピソードが重複して出てきたこと(おそらく)
・ケーブルカーに乗ったのが「ケイコ」にすり替わっていたこと

幻想的でミステリアスな作品でした。英語の勉強として簡単な文章ながらも文学に触れたいと思って選びましたが、これはもっと読解力がついてから再読したいです。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: イギリス
感想投稿日 : 2015年5月19日
読了日 : 2015年5月19日
本棚登録日 : 2015年5月14日

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