煙か土か食い物 (講談社ノベルス)

著者 :
  • 講談社 (2001年3月7日発売)
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本棚登録 : 1355
感想 : 240
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ERで働く主人公のもとに届く凶報、母親が何者かに殴られて埋められた--故郷に帰り連続主婦殴打事件の捜査に乗り出した主人公、と、兄弟の、親の、家の、呪縛。

「文圧」って確かにこういうモノなんだろうなと思える迫ってくる濁流みたいな文章にどあーと押し流されます。スピードにのって読める。展開も早いし。でも最初、おお良く出来たミステリか?と思ったら大間違いでした。なぜならば殴る蹴る。そして痛い。主人公の幼少期からの二番目の兄の周囲で起こるイジメやら父との確執や暴力やら彼の失踪にいたる描写がやたらリアルでまともに読んだらもっていかれそうになるくらい。リアルというのはつまり兄弟4人の心情がホントに丁寧に書かれてて誰にでも感情移入できそう。この人はすごい。結果としてこの話はミステリとしては不完全燃焼であってどちらかというと家族の物語に終始してしまったんだけれどもそっちで強烈なカタルシスをもたらしてくれるから良いのではないかと思います。いやだってタイトルからしてすごいじゃん。"人間死んだら煙か土か食い物"。そうじゃないっていうことを知って最後に主人公は泣くんだけれども。力技でねじ伏せられたような。まぁそれでもいいかと思えるような。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ミステリ
感想投稿日 : 2009年8月14日
読了日 : 2009年8月14日
本棚登録日 : 2009年8月14日

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