圧倒的な知識量で描かれる渾身の現代ミステリ。
まだ事件の起きない上巻では家族、友人、恋人に対して抱く微かな「不信感」や、自分以外が他者であるがゆえの「心のズレ」を感じる違和感を巧みに書いている。
人間関係を上辺では体裁良く保っていても、日常的に心の奥底に感じている上記のような空虚感は誰でも抱いた事があるのでは無いだろうか。
序盤のシーンで韓国語教室のCDを義母が流した時に、佳枝が「夫が在日韓国人なのではないか」と不意に疑ってしまう部分から、様々な人間が抱く不信感の連鎖はまるで自分を見ているかのよう。
ただ上巻は地の文が三人称なのだが、二次的な一人称が一つの章の中でコロコロと変わってしまって分かりづらいシーンが多かった。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
ミステリ サスペンス
- 感想投稿日 : 2012年6月15日
- 読了日 : 2012年6月15日
- 本棚登録日 : 2012年6月15日
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