キッチン (角川文庫)

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本棚登録 : 13917
レビュー : 1595
著者 :
とりさん 小説   読み終わった 

吉本ばななさん、初めて読んだ。
近い人の死を乗り越える、2件の話構成。
感性フルな作家さん。好きになった。

1件目。主人公はこの世で一番台所が好き。どこのどんなのでも、それが台所であればつらくない。いつか死ぬ時が来たら、台所で息絶えたいと思う。心を安らかに保つ場所が、彼女にとっては台所。一般的ではなさそうな場所を、それでいいとして設定するところがまず、いい。

30年も前に書かれた本に、愛した女性の死を乗り越え性転換した男性を登場させるところも、いい。万年筆と恋人に対する愛情が同質な人もいるかもしれない、という表現で、愛の質や重みを本人以外が量ることなどできないと触れるところも。
生まれてからずっと幸せを生きる人がいる一方で、主人公は死を孤独を常に近くに感じて生きてきた(と、本人は思っている)。切り立った崖っぷちを歩き、国道に出てほっと息をつき見上げる月の美しさを知ってしまった主人公は、だからこの先も後者の生き方をしたいと思う。いい。

2件目。突然恋人を失った主人公。恋人と兄を失った、恋人の変わった弟。大事な人を失っても日々は続いていくから、ちゃんと切り替えなきゃいけないという普通の話なのだが、その境地に至るまでの描き方がいい。主人公の最後の語りが特に好き。

2件とも、多様性をそれでいいとして、むしろ魅力的なものとして描いている。いい。日に当たって生きる人にはもしかするとわからない次元の感性が描かれている。死を乗り越える話なのに、暗くないところも好きだ。

レビュー投稿日
2019年7月7日
読了日
2019年7月7日
本棚登録日
2019年7月2日
2
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