犯罪捜査の心理学―プロファイリングで犯人に迫る (DOJIN選書 17)

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  • 化学同人 (2008年5月20日発売)
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20101208
「プロファイリング」というと、いわゆる「犯罪心理学者」のような人がテレビに出てきて犯人像を述べたりするシーンが連想される。(しかし、こうした犯人像プロファイリングが成功しない例は多い。酒鬼薔薇事件などが良い例)

●犯人像プロファイリングについて
・FBIのプロファイリング
 犯行現場カテゴライズと犯人タイプ分けの関連
 「秩序型」は連続殺人においては典型的、「無秩序型」は特異。それゆえ混合型発生
・プロファイリングの新たな方式 リヴァプール方式
 犯罪行動の間の関連をとらえる——「近い」行動、「遠い」行動
 犯人の属性と行動パターン
  レイプ犯の行動パターンマッピングによるカテゴライズ

●地理的プロファイリング
・サークル仮説とその限界 拠点モデルと通勤モデル
・地理的ターゲッティング 円中心仮説、重心仮説
・犯人の属性や行動特性からの推定
・コールサックエフェクト(暗黒星雲効果) 自宅のそばでは犯行を行わない
犯行が行われにくい自宅周辺・・・バッファーゾーン

●犯人の危険性推測
・ストーカーの行動・タイプから緊急度を推定する
 緊急性の高いケースが放置されて殺害につながる等の悲劇を防ぐ
 拒絶型、憎悪型、無資格型、親密性希求型
・ロジスティック回帰分析を用い、被害者・加害者の属性や関係から暴力行為が発生する確率を推定する

●動機の推定
・大量殺人事件
特徴
/犯人は挫折や絶望の中にいる。特に事件直前に大きな絶望を体験
/他罰的考え。特定の個人でなくカテゴリー的な敵を想定している。
 →そのカテゴリーに属するものをなるべく多く殺害することを望む
/襲撃計画のほのめかし、日記やネットでの公開
/遺書や手記を書く
/愛する家族や人やペットなどを先に殺すことがある(自分の死後の迷惑を考えていることもあり、大量殺人における心中的側面)
/最終的に自殺または警察を利用しての自殺(suicide by cops) 捕まると死刑を望み反省はしない
/過剰な武器の携帯
/凶器を手に入れられる環境、嗜好
/自分が誰かを隠そうとしない。覆面をしたり防犯カメラを避けたりしない。逆にアピールしようとする
/基本的には逃走を考えない

→以上の特徴が、日本で起こった池田小事件や秋葉原無差別殺傷事件などにもよく当てはまるのがわかる。
 こうした犯人の特徴からいうと、校門の施錠や防犯カメラの設置、職員への格闘訓練などは大量殺人事件に対して殆ど無意味。
 どうすればよいのか、未だ解答は見いだされていない。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ:   社会心理学
感想投稿日 : 2011年1月22日
読了日 : 2010年12月8日
本棚登録日 : 2010年9月29日

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