ある明治人の記録 改版 - 会津人柴五郎の遺書 (中公新書)

著者 :
制作 : 石光真人 
  • 中央公論新社 (2017年12月20日発売)
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本棚登録 : 290
感想 : 23
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「名著、刷新!」ということで復刻されたものです。会津の柴五郎氏の遺書を第一部に、その後や解説を第二部にまとめています(第一部は文語体ですが、徐々に慣れて読みやすくなります)。

「西郷どん」に見られるようないわゆる薩長からの視点ではなく、反対側に立った会津の視点がよくわかります。かつては京都や幕府を守り、ロシアと事が起これば駆けつけながら、最後には朝敵・賊軍と呼ばれるようになった会津。そのため、塗炭の苦しみを味わった柴五郎氏(後に陸軍大将)の真情の吐露は、旧来の歴史観だけに固まってはいけないのだと思わせます。

西南戦争での政府軍の派遣にあたっては、「芋(薩摩)征伐仰せ出されたりと聞く、めでたし、めでたし」と日記に記し、西郷・大久保ともに去ったあとには、「両雄非業の最期を遂げたるを当然の帰結なりと断じて喜べり」と書き残しています。

明治150年も、会津地方などに配慮して、戊辰150年とも呼ぶそうですが、150年たっても人々の記憶に残るのはさもあらんと思う次第です。

歴史を見る上では、さまざまの立場への目配り、心配りが必要なのだと、しみじみ感じさせる一品です。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 歴史
感想投稿日 : 2021年7月11日
読了日 : 2019年1月22日
本棚登録日 : 2019年1月22日

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