いい意味で読むのに時間のかかる小説。そんな印象の1冊だった。
あくまで黙読なのに、まるで音読でもしているように一言一句丁寧になぞって読んでいた。斜め読みや流し読みになる部分が一切なく、最初の一文字から最後の一文字まで、本当に余すところなく全て読み切った! という達成感めいたものを感じずにはいられなかった。
淡々と綴られるお島さんの人生。時代を考えると彼女のそれが「平凡」とはあまり思えないが、それでも一人の女性の半生を劇的な何かがあるわけもなく描かれている。一見退屈にも思われるが、気が付けば「次はどうなるのだろう」「お島さんは今度は何をするのだろう」と頁をめくる手が止まらなかった。
今ならばそこまで珍しくもなさそうな、うっかりすると男もぶっ飛ばしかねないお島さんの「あらくれもの」っぷりは読んでいて「す、少しは落ち着いて下さい……!」と思いながらもどこか爽快で、「いいぞ! もっとやれ!」と思う自分もひっそりといたことは間違いない。
「どうしても私は別れます。あの男と一緒にいたのでは、私の女が立ちません。」
お島さんのこの言葉がとても印象的で、すごく好きだった。
静かでありながら先に先にと進みたくなる読んでいてすごくいい気持ちになる文章だった。とても好みの文章。他の作品も読みたいし、『あらくれ』もまた時間をかけて最初から読み返したい。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2017年11月25日
- 読了日 : 2017年11月25日
- 本棚登録日 : 2017年7月8日
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