ユング研究所から日本人としてはじめてユング派の分析家の資格を得てきた著者が、京大文学部での講義をもとにまとめた、わが国はじめての本格的なユング心理学入門書である。
カール・ユングの分析心理学はフロイトの精神分析とならんで、あるいはそれ以上に、欧米では高く評価され、その影響は心理学や精神医学の領域をこえてひろく教育や宗教・芸術の分野にまでおよんでいる。
本書はこのようなユング心理学の基本的な枠組みと概念・方法を、主として臨床心理学者としての観点からさまざまな臨床例の分析によって具体的にわかりやすく説くとともに、人間の心理の投影あるいは創造としての夢・象徴・神話・芸術等の分声楽的な解釈を明らかにして、ユング理論の一個の心理学的理論にはとどまらない深さと広がりを興味深く伝えるのである。
しかも本書の特色は、こうしてユングの正しい紹介に努めながら
記述のすみずみにまで著者自身のゆたかな人間観としなやかな感性が息づいて、単なる祖述の域を脱しているところにあり、読者は思わずページを繰らされてしまうであろう。(扉紹介)
実際、ユングの原著は難解で異分野の学徒にはハードルが高いようにおもう。しかし本書はできる限り容易な表現を使おうとする著者の意志が感じられ、ストレスなく文字通り好感を持って読み進めることができるだろう。ユング心理学の概観を知るために最適な本である。おすすめ。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
人文・社会科学
- 感想投稿日 : 2011年12月14日
- 読了日 : 2011年12月14日
- 本棚登録日 : 2011年12月14日
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