鑑定医シャルルの第三作目。シリーズの中では一番残虐な事件とその背景になるので、読み終えた後に鬱々とした気分になってしまうかもしれません。
第一作同様、犯人の独白シーンなどがあり、途中で誰が犯人か、を思わせる文章があります。しかしその背景には……というのが今回の書かれ方です。
前作と今回の共通点は、家庭の在り方、母親の存在、です。今回はそこに加え、子供をどのような育て方をするか、子供がどのように育てられてきたか、が事件の背景に深く影響してきます。
この作品を書かれた時期に、日本中が大騒ぎになった殺人事件があり、その殺害後の行動について作品内と類似する点があるから、と文章を削除したり書き換えたりと苦労された部分もあるそうです。だからこそ、家族間の人間関係について重要視した作品を書き上げられたのではないかと思います。
今回も難解な専門用語と精神疾患が描かれており、理解しながら読むには少々時間がかかるかと。
三作品は事件の発生場所も状況も違うので、一話ごとにヒロインとなるべき女性、もしくはそれに近しい女性が代わる代わる登場するのは仕方ないですが、それぞれにあっさりと心を開いてしまうのは、やはりシャルルらしいとは思えません。人間嫌い、という設定の割には、ちょっとしたことですぐ自分の心の闇を人に打ち明けるのはどうなんだろう……。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
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作家名 は行
- 感想投稿日 : 2011年2月26日
- 読了日 : 2011年2月25日
- 本棚登録日 : 2011年2月2日
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