「ドーン」で明確になった、分人主義の集大成。
前作「かたちだけの愛」は、愛というテーマを分人主義のフレームワークで語った。この小説は、それを自分自身、死者、そして世界にまで考え方を広げて、「自殺」というテーマの中で上手く消化している。とても上手く。
若干分人主義の説明くさいところも鼻につくこともあったけれど、第一にプロットや伏線の回収の仕方、言葉の使い方は素直に感心してしまったし、何より深い感動を得ることができた。それは思いやりであり、人間が素直に希求する何かを的確に捉えているからだろう。
「自殺者が生き返る=復生する」という突飛な世界観を丁寧に伝え、それを限りなく有効に働かせている。平野啓一郎の世界観の作り方には毎回感心させられるけれど、これをスムーズにやってのけるのは卓越した筆力と構成力に違いない。
いずれにせよ、読んでいて共感で涙がこぼれる小説はなかなか出会えない。自分の中で大切な作品になっていくのだと思う。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
小説
- 感想投稿日 : 2012年11月28日
- 読了日 : 2012年11月28日
- 本棚登録日 : 2012年11月28日
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