少しでも暑い日があると,「今年の夏は猛暑だ!(温暖化だ)」というような報道がなされる。でも涼しい日には「今年は冷夏だ!」なんて報道はあまり聞かない。気温は揺らぐわけで平年より暑い日なんていつでもあるのに報道は適当なもんです。この本には報道のひどさも述べられていますが,著者の言いたいことは序章に全てまとまっています。そこを読んで理解できれば他は読む必要ないでしょう。本文中でも述べているように著者が言いたいことは単純である。「温暖化は起きているが,それは遅くとも1800年頃から始まっている。だから現在の温暖化を戦後に急増した二酸化炭素(炭酸ガス)で全て説明するのは明らかに間違っている,地球の天候の自然変動の部分が大きい」ということです。それを科学的データに基づいて明らかにしています。シロクマだとか氷河の崩壊だとか温暖化と関係ない報道も指摘されています。IPCCは温暖化問題を政治に絡めて金を得ようとした学者たちの集団である(指導的立場にある学者がこのようにお金を取ってくるのを著者は否定しているわけではない)。もともと原発を推進したい英国のグループが温暖化問題を取り上げたようだとも述べられている(本書は福島原発事故の前です)。しかし,著者自身が述べているが,IPCCが宣言したとおり温暖化問題は「既に政治」ゲームとなっている。温暖化対策=二酸化炭素削減=排出量取引という図式になっている。著者は最終章であるべき状態に関して提案しているが,こうなってしまうと真っ当な科学的議論をしてもなかなか止められないだろうな,と感じた。温暖化政治ゲームが他に害をなさないよう,とくに日本が馬鹿正直に破滅へと向かっていかないように持っていくしかないのではないだろうか。
- 感想投稿日 : 2011年9月16日
- 読了日 : 2011年8月2日
- 本棚登録日 : 2011年6月25日
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