文庫 銃・病原菌・鉄 (上) 1万3000年にわたる人類史の謎 (草思社文庫)

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レビュー : 438
制作 : 倉骨彰 
taishibrianさん History   読み終わった 

我々が歴史を振り返るとき、現代は進歩していて過去は未開である、と無意識に判断しがちである。ニューギニアの人食い民族は未開な野蛮人で、それらを早く西欧社会の先進国の方向に導かなければならない。そう考えて覇権主義を唱えてきた正義の国だって存在している。

一方で、素朴な疑問も湧いてくる。圧倒的な栄華を誇ったインカ帝国はどうして少数のスペイン人に滅ぼされたのか。逆に南米からヨーロッパに侵攻する可能性はなかったのか。あるいは、近代まで狩猟採集生活を続けてきた原住民と、産業革命を起こした欧米人を分けた要素は何だったのか。

『銃・病原菌・鉄』というタイトルのとおり、狩猟採集から農耕へと食糧生産のスタイルが変化するにしたがって、余剰生産物が生まれ富の偏在が発生する。それが階級制度をつくり、やがて武力によって他の民族を侵略する“銃”の要素が生まれる。同様に、農耕によってある程度の人口密度が達成されると、そこに疫病が発生する。早期に免疫を得た民族に比べて、疫病に耐性のない民族は脆い。あるいは、鉄鉱石などの鉱物資源の偏在によっても国力の強さが規定されていく。

このような環境条件にしたがって、現代社会の構造が成り立っている。世界の多くの地で先住民を追いやったヨーロッパ系民族は、もともとは辺境の異端民族でしかなく、数々の偶然的要素によっていまの覇権構造がつくられていることが理解できる。

そこには西洋文明が正しいとか狩猟採集生活が間違っているといった判断基準ではなく、環境条件が変化するにしたがって支配的になるライフスタイルも替わるという当たり前の事実が示唆される。謙虚に歴史から学びながら、持続不可能な現代社会をどのように変えていくのか。我々に突き付けられた課題は重い。

レビュー投稿日
2013年1月7日
読了日
2013年1月4日
本棚登録日
2012年2月3日
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