西洋美術作品や書物を引用して、あるテーマにおいて人々はどんな見方をしてきたのかという事柄を問う作品。急ぎ足で読んでしまったために、理解しきれないところもあったが拾い読みでも大変面白い見解に触れることができた。
美しさ・醜さの章では、美しいとは何か。醜いとは何かを様々な時代の美醜の描かれ方を通して解明する。
美しさについて。「美の経験はいつも、私たちがその一部をなさないこと、どうしても直接参加したくないようなことを前にして、そこに背を向けながら感じるものだったように思う。美しさの経験とそのほかの情熱のかたちを分けるか細い千は、私たちが美のあいだに取る距離に引かれている(p59)」などの記述や、醜さについては、美とは逆に私たちの感情に根差したものであるとの指摘。
美醜は私たちの生活に根差していながら、それを消費する日常の私は美醜とは何かという問いにこのような答えの可能性があることを知らなかった。
その他、小説の登場人物の存在について、芸術で表現される不完全さのかたちについて、果ては陰謀論について。様々な作品を読み解いて得られる見解を私たちに分け与えてくれる書。美醜編のような、いままで生活の身近な場所にありながらも、深くは考えて来なかった様々な事柄の意味の可能性の一端を示してくれる。
相当にじっくり読まなければ理解できないように思える箇所もあったため、ちょっとずつ再読予定。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2019年3月21日
- 読了日 : 2019年3月21日
- 本棚登録日 : 2019年3月14日
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