ことり

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本棚登録 : 1795
レビュー : 295
著者 :
takanatsuさん  未設定  読み終わった 

ひっそりと生きる小さくて弱い命がただただ愛おしい。

「小鳥の小父さん」の仕事はゲストハウスの管理人。
その「仕事」が生きるために必要なのは疑う余地もない。
ただ、お兄さんがいなくなった後、小鳥の小父さんを生かしていたのは鳥小屋の掃除ではなかっただろうか。
道具を自分で揃え、給金も発生しない鳥小屋の世話は小鳥の小父さんの中では「仕事」とはまた違う行為のようだった。
幼稚園の園児のためではなく、お兄さんと自分のために続けているそれは、「仕事」よりももっとずっと切実な何かだった。

そしてそれは小鳥の小父さんと世界の接点だった。
司書の女性も園児達も園長先生も「小鳥の小父さん」を見ていた。

誰かのことを知ろうとする時、いったい何について知るべきなのか?
小鳥の小父さんの生い立ちもこの本には書かれているけれど、全てを知らなければ小鳥の小父さんのことを知ったことにはならないのだろうか?
そうだとしたら私は誰のこともきちんと知ることは出来ないのだ。こんなに悲しいことがあるだろうか。

でもそうではないと信じたい。
鳥小屋の世話をしている姿を見て、「小鳥の小父さん」と呼んだ子ども達やいつも感謝を示し続けた園長先生は小鳥の小父さんのことをきちんと知っていたと思う。
小鳥の小父さんが図書館で借りる本が全て小鳥に関する本だと知っていた司書の女性も、小鳥の小父さんに歌を教わったメジロも。
彼らが見ていたのが小鳥の小父さんの一面に過ぎなかったとしても、きっと小鳥の小父さんを「ことり」とは呼ばないから。

誤解してしまうことはある。
誤解されることもある。
思い込みで見えなくなることも多い。
それでも私は小鳥の小父さんやお兄さんに疑いの眼差しを向けたくはない。
理不尽に追い出したくもない。
全てを知ることは出来なくても、何を大切にしているのか、何がその人を生かしているのかをきちんと知ろうとしよう。
私には意味が分からないポーポー語が優しい言葉だということを忘れずにいよう。絶対。

レビュー投稿日
2013年1月30日
読了日
2013年1月30日
本棚登録日
2013年1月30日
15
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『ことり』のレビューへのコメント

まろんさん (2013年1月31日)

胸が痛くなるくらい素晴らしいレビュー!

この『ことり』という作品を通して、時空をこえてtakanatsuさんとうんうん。と頷きながら握手できたような気がしました。
レビューの最後の3行が、ことに素晴らしくて
鳥小屋をじっと見つめるお兄さんのかたちに馴染んだ金網のくぼみや
仏壇に並んだ、色とりどりのことりのブローチや
メジロの鳥籠を抱きしめて横たわる小鳥の小父さんの姿が浮かんできて
愛おしくて、切なくて、また涙が零れました。

takanatsuさん (2013年1月31日)

まろんさん、コメントありがとうございます。
「時空をこえてtakanatsuさんとうんうん。と頷きながら握手できたような気がしました。」
ありがとうございます!
私もレビュを書き終えてからもう一度まろんさんの書かれたレビュを読んで、本当にその通り!と何度も頷いてました。
特に小父さんの魂がお兄さんの待つ空に近づくようというところを読んで、すごくすごく嬉しくなりました。
私も救われた思いでした。

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