政と源

著者 :
  • 集英社 (2013年8月26日発売)
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本棚登録 : 3544
感想 : 541
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ラストが爽やか。
それまでの国政さんのうじうじが、すーっと薄れていった。
良かった。

国政さんは人に拒絶されるのが怖くてなかなか一歩が踏み出せない。
別居中の奥さんにも、結婚して一児の母になった娘にも、可愛い孫娘にも、どんな風に話せばいいか分からない。
会いに行っていいのかと足踏みしてしまう。
国政さんのそんな逡巡が嫌になるくらい分かってしまう。
もう本当に嫌だ。
こんなうじうじが何のプラスにもなっていないことなんて知ってるよ。知ってるけどどうしようも出来ないんだよ。
読みながら同族嫌悪でイライラ…。

国政さんの幼馴染の源二郎さんは国政さんとは対照的。
若い弟子に慕われ、町内でも顔が広い。
でもこの軽やかさは天性のものですよ…と私などは(きっと国政さんも同じでしょう)思ってしまうのです。
そんな自分にまたイライラ…。

この小説はそんな国政さんと源二郎さんの友情の日々を描いている。
大事件が起こるわけではない。(途中ちょっとバトルがありますが)
地味に喧嘩したり、仲直りしたり、(主に国政さんが)嫉妬したり、ご飯を食べたり、昔のことを思い出したり、なんてことない日常。
でもそんななんてことない時間を積み重ねることでしが、人は人と繋がれない。
相手への気遣いを伝えること。
相手から差し出された手を握り返すこと。
その一つ一つを疎かにしちゃいけないんですね。

照れくさくても、嫌がられないかなって不安になっても、最初はおどおどとでも近付いて行く。
どうしても無理なら潔く諦める。
でも、自分は嫌いにはならない。
そんな強い人間になりたいなと思った。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2014年5月31日
読了日 : 2014年5月31日
本棚登録日 : 2014年5月31日

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