
「人はお金をつかわずにはいられない」
うん。
お金をつかわなくちゃ何にも出来ない。
餓死に一直線だ。
いきなりサラ金の話から始まって、オンラインゲームにお金をつぎ込んだり、「人間バンク」なるものからお金を借りてみたり、遺産が三万だと言われてみたり‥。
お金について考えさせられるアンソロジー。
楽しいわけではないのに真剣に読んでしまうのは、何か教訓を得ようとしてしまっているからだろうか?
お金の話はいつの間にか体温を奪っている。
山崎ナオコーラさんの「誇りに関して」に描かれているお金を使うことの罪悪感が、なんとなく分かる気がする。
親からおこづかいを貰っていた時は無駄遣いをしていると怒られるのでは‥と気にしていた。
自分で働くようになった今はいったい何を恐れているのだろうか?
「誇りに関して」の主人公のように「社会から許されたい」なんて感覚が自分にあるとは思えない。
「老後に差し掛かったとき、七千万円くらいの貯金がないといけないらしいんですよ。」
というセリフがあったけれど、では七千万円あれば安心なのか。
たぶん違うだろう。
七千万円あれば七万円の買い物に罪悪感がなくなるのか。
なくならない気がする。
何に対する罪悪感なのか分からないから断定は出来ないけれど。
お金をつかうことによって生じるストレスもあれば、お金をつかう快感もある。
手元のお金がなくなる不安もあれば、買った宝くじが当たるかもなんて夢を見ることもある。
「お金がほしい!お金のために働いてます」と言い切ることは出来なくて、「じゃあ要らないのか」と言われたら「要ります」とうなだれるしかない。
お金は無ければ無いなりに、あればあっただけ、使い道が見えてくるからいつまで経っても満足出来ないのではないか。
それがこわい。
それがあの罪悪感の根っこにあるのかもしれない。
- レビュー投稿日
- 2013年5月13日
- 読了日
- 2013年5月13日
- 本棚登録日
- 2013年5月13日
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