アルジャーノンに花束を (ダニエル・キイス文庫)

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本棚登録 : 8996
レビュー : 1027
制作 : Daniel Keyes  小尾 芙佐 
takapy0629さん 小説   読み終わった 

素晴らしい本だった。もっと早く読んでおけば良かったと後悔した。この作品の中には悲しくて、それでいて優しい警句が沢山含まれていた。そして短期間に猛烈な知性の盛衰を経験し、社会の様々な側面を、様々な立場から、様々な心情で眺めるチャーリーを通して、私達は普遍的な幸福と、愛と、人生について考えさせられる。
知的障害から手術によって卓越した知能を持つようになった主人公を通して、世界を、知性を対象化する。と言う大筋は言葉にすれば単純なようにも思えるが、それをこれだけ鮮やかに、生々しく描いてしまうダニエル・キイスの腕には本当に驚かされた。

この作品を通して様々な事を考えさせられる。人間の哀れな尊大さ。滑稽さ。親子の愛のあり方。障碍者に関する問題。特に、知的障碍者に関する問題と、おそらく今後はアルツハイマーを通して我々の多くが直面する人間性の問題...
しかし最大のテーマは、知性と愛についての話であったと思う。
ぼくの教養はぼくと、愛する人達-ぼくの両親ーとの間に楔を打ち込む。
とはダニエル・キイス本人の言葉であるが、そのことについて本当に生々しく描き出していた。知性とは何なのか。時として知性は愛を排斥する。それはどういうことなのか。チャーリー・ゴードンの数奇な運命を通して、その難題を叩きつけられる。
チャーリーは知性の増減に伴い、様々な立場を行ったり来たりすることになる。それで読者は、常にこちら側にも、あちら側にも、そちら側にも属させられる。するとどこかで、必ず『自分』を対象化して見る機会を与えられる。読者は誰もが、自分がチャーリーであり、ジョウであり、ニーマーであり、バートであり、アリスであり、フェイであり、ローザであり、ノーマであることを発見する。そして立ち止まって考えさせられる。いかに生きるべきなのか。
この本は、弱い者には勇気を、強い者には優しさを与えるような本だと思った。最後にウォレンへ行く決心をしたチャーリーの切実な言葉は強烈だった。様々な事を経験し、沢山の苦悩を抱え、しなくても良い苦労をして、最終的にまた難儀な存在へと叩き落されてしまったはずなのに、そして前よりも尚悪い運命に囚われたはずなのに、彼の言葉のなんと温かいことか。
我々は誰もがチャーリーであると同時に、誰もがチャーリーであろうとしなければならない。

一人でも多くの人間に読んで欲しい作品。

レビュー投稿日
2013年11月2日
読了日
2013年11月2日
本棚登録日
2013年11月2日
4
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