終末なにしてますか? もう一度だけ、会えますか?#05 (5) (角川スニーカー文庫)

  • KADOKAWA (2017年10月1日発売)
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感想 : 3
4

巻が進むごとに登場人物たちの境遇が悲惨なものになっていく本作。この第5巻もその流れは変わらず
唯一の清涼剤は笑顔で壁を引き開いたお姉さんくらいなもんだよ!……言葉にしてみると意味が判らないね。何だろう、壁を引き開くって……


この巻で登場人物たちを翻弄するのは遺跡兵装モウルネン。前の巻でちらっと名前が出ていたけど、結局正体は判らないまま。判らないからそれを巡って様々な謀略が張り巡らされる
それだけではなく、謀略の周りではそれに振り回される人々や関わる者達の想いも渦巻いていく

特にフェオドールと行動を共にしても正体を明かさないマルゴがあまりに不憫で……
お互いが大切だから生きていたと知って言葉に出来ないほど嬉しいのだけど、大切な相手だからこそあの頃とあまりに変わり血腥い事に手を染め続けている自分の姿を見せたくないと互いに思ってしまうフェオドールとマルゴ。
何年も離れていたのに同じようなことを考えている二人はとても似ている。似ているから互いが何故正体に言及しないかも判ってしまう。判ってしまったら相手の意志を尊重するため尚更言及できなくなる。
そういった描写からは二人が今も強い絆を持っているのだろうと判るのだけど、だからといって正体を明かさずに接するマルゴの様子は見ているこちらとしてはあまりにもどかしいばかり

また、ラキシュの状態も厳しいものに
前巻で本来の自分を思い出してしまった彼女はそれでも尚、フェオドールの傍に居ようとする。いずれ消えてしまうつもりでも、その瞬間までは彼の隣で幸せを享受したいと思っていた。けれど、この巻で明かされた事実によってそれも難しくなってしまう
今のフェオドールを最も理解してくれるのがラキシュであり、同時に今のラキシュを最も理解できるのはフェオドールだった
相手の思惑を理解できて、その上で自分も相手も幸せにしたいと思う。でも近くにいればフェオドールの負担となって命すら削ってしまう。ならラキシュに取れる方法は一つしか無いわけで
どんどん悲惨さを増すフェオドールの近くからまたもや彼を理解してくれる人が去ってしまったのはあまりにも寂しい事態だし、ラキシュにとっても辛いこと
ラキシュに付いていくことを選んだマルゴはその辛さをどこまで埋めてやれるのかな?そしてマルゴ自身も癒されることは有るのだろうか?

また、謀略とは別ベクトルで今回明かされるのが大賢者の行方。
前シリーズで重要なポジションを締めていた彼が新シリーズになって音沙汰無くなって、ネフレンの行方も判らなくなってと少しもどかしい気持ちが有ったんだけど、明かされた事情が割ととんでもない……
大賢者、星神、地神が揃って居なくなり、浮遊大陸群を守る者が居なくなったという衝撃的な事実。
以前、フェオドールは自分たちが奇跡の上に守られていると気付いていない人達を判らせるために大陸群を落とすんだと息巻いていた。しかし、その実自分自身も守られていると理解しきれていなかった。
ここに来て、更にフェオドールがまだまだ判っていなかったことが判明してしまう。
フェオドールが何をしようと2年程度で沈むとされる大陸群。この事実を知った時にフェオドールがどのような覚悟を固めなければならないかが気になってしまう
また、この事実を知って尚、謀略を張り巡らせているオデッドの真意も気になるね
話を聞く分には彼女ってフェオドールよりも堕鬼種らしい堕鬼種なんだけど、全く感情がないわけじゃなくて。その点はフェオドールと似ていて、嘘はついて周囲は騙していても自分が思うほど周囲は騙されてくれないという状況。それでも尚、何か恐ろしいことを隠しているから彼女も恐ろしい存在になるんだけど


この巻では様々な謎が明かされたけど、全てではない。特に過去の闇に潜んだままのモウルネンの謎の全容は見えてこない
また、主要人物達の内側に潜んだ存在が何故そのように潜んでいるのかという部分も見えてこないまま
次巻で明かされるだろうそれらが齎すものが果たして希望となるのか、絶望となるのか恐ろしいばかり

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ライトノベル
感想投稿日 : 2019年7月30日
読了日 : 2019年7月30日
本棚登録日 : 2019年5月6日

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