終末なにしてますか?異伝 リーリァ・アスプレイ (1) (角川スニーカー文庫)

  • KADOKAWA (2019年6月1日発売)
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4

正規勇者リーリァが主役の異伝。
今刊行されている「すかもか」では人間が居た500年前の時代に関係する人が居ないため、自然とリーリァや勇者関係の話が展開されなくなったんだよね。それを考えるとこの時代が描かれるのはかなり久しぶりか

この異伝で描かれるリーリァはまだ13歳。「すかすか」で描かれた頃より少し幼い……筈だけど、既に正規勇者として求められる在り方は完成されている印象。
むしろ同時に登場しているヴィレムの幼さの方が目立ってしまう
こういう書き方をしてしまうとリーリァが規格外に思えるけど、そもそも作中での各種描写がリーリァが持つ異端とも言える在り方をこれでもかと強調しているようにも思える
作中で言及されているように正規勇者って普通の人間の枠で捉えることがそもそも間違っているんだろうな。それは「人間としての努力をやりすぎると、せっかく『人間離れしてる部分が薄れてくる』とのセリフに表れている

今回登場するリーリァは不調のまま活動している。身体に約4万7千人を殺す呪詛を抱え、聖剣セニオリスも汚されている。そういった前提があれば普通は活動に制限が付きそうなものだけど、リーリァはそんな事お構いなしに正規勇者として求められる仕事をする
普通とか当然とか関係なしに救世の英雄として巨悪を討つ
どこまでも規格外な存在

ただ、そんな規格外なリーリァにも苦手なことが有るというのは面白い。まあ、苦手というか求められた役割ではないと言うか
人類の危機とか国の存亡などの事態には滅法に強い。その代わりに誰か一人や二人だけ守るみたいな行為は苦手とする。大勢を救うことは出来ても本当に守りたい人だけは守れない
それはとても悲劇的な在り方だけど、その在り方が正規勇者としてのリーリァを支えているというのは何とも皮肉なこと

でも、それはリーリァだけで事態に対処しようとした場合の話で、今回のようにシリルが居ればリーリァの足りない部分を補ってくれるし、ヴィレムだってリーリァが救えなかった人を救うことが出来る。
特に何度もリーリァが救えなかった少数を救ってきたヴィレムという存在はリーリァにとって、とても特別な存在であるというのも見えてくる。最終目標としてリーリァを救うことすらヴィレムは考えているし
ただ、それが逆にリーリァが正規勇者を辞められない理由にもなってしまうのは何とも言えなくなるけど


本作ではリーリァの物語の他に初代正規勇者と聖剣セニオリスの曰くについても描かれている
望んだものが手に入らず、守りたいとものを守れずそれでも前に進み続ける宿命を持つ勇者。そんな勇者にとって何も望まなければ傍に要てくれる存在というのはどれだけ有り難い存在だったのだろう。
そしてその身を使って尚勇者と共に歩むと決めた行為がどれだけ尊かったことか
このセニオリスが後々に様々な勇者たちと共に有り続けたことを考えると、これからはセニオリスの描写を読む時はまた違った心境で読むことになりそうだ


そういえば作者も後書きで触れてるけど、まだまだ500年前の時代について描かれてないことって幾らでもあるんだよね。ただ、先にも述べたけど「すかもか」ではこの時代に関係する人が居ないものだから本編中で描かれる可能性はほぼ無いわけで……
既に終わってしまった時代の話だから、本編を進める上では描く必要が無いのだろうけど、どうにも「一体何が有ったのか」という部分がどうにも気になってしまうことが多すぎますよ……

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ライトノベル
感想投稿日 : 2019年8月11日
読了日 : 2019年8月11日
本棚登録日 : 2019年5月18日

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