記憶喪失の俺には、三人カノジョがいるらしい (1) (MF文庫J)

  • KADOKAWA (2023年3月25日発売)
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感想 : 3
4

タイトルやあらすじからミステリ的な切り口で「本物の彼女は誰?」みたいな話を展開すると思っていただけに、3人とも本当に彼女だし互いに三股かけられていると認知しているという導入には驚いた
記憶喪失状態の勇紀は更に驚いただろうけど


一般的に三人の女性と同時に付き合うなんて倫理的に宜しくないもの。ポリアモリーなんて概念は有るそうだけど、それが大衆的かと云えばそうではないわけだし
だから記憶を無くしたばかりの勇紀が関係解消へと舵を切ったのは不思議ではない

この関係が一般的でないのは三人が三人とも三股を受け入れていた点か
そうなると四人の関係は倫理に反するものというよりコミュニティ的な意味合いが強くなるのかな。明日香や紗季が主に立ち回る事で維持されるコミュニティ
ただ、そう考えた時に問題となるのはコミュニティの主たる勇紀が記憶喪失により人格に罅が入った時、それでもコミュニティは変わらずに存続できるのかという点だね

記憶喪失後の勇紀にとって幸運だったのは明日香達が以前の真田勇紀を取り戻そうと躍起にならなかった点だろうね。また、勇紀自身も以前の自分に固執せず、かといって無視もせず、新たな環境の構築を目指した
その意味では以前に繋がりが有るかなんて判らなかった夢咲陽子と真っ先に会話できたのは勇紀が新たな一歩を踏み出す上で重要なポイントとなったのだろうね


それにしても、ヒロイン勢は誰も彼も美麗と言いたくなるね。そもそも三大派閥なんてものが存在している時点で何処か現実離れしているんだけど
明日香は幼馴染兼彼女として私生活面の世話をしてくれるし、紗季はクラス内世話係兼彼女としてクラス内でのバランスに影響力を行使してくれる
そう考えると後輩兼彼女のひなが一歩も二歩も出遅れているという印象を抱かざるを得ない。そもそも付き合い始めたのも最も遅いわけだし

そうした弱い立場が夢咲との関係に響いた一面もあるのだろうな……
三大派閥に比べたらひなは圧倒的に弱い立場で勇紀との関係も公言されていない。なのに明日香や紗季と親しい勇紀と一緒にいる場面が目撃されてしまったら、繊細なバランスで成り立つ学校というコミュニティを乱すには充分過ぎる事実

こうなると問題になるのは明確に苛めと言いきれない事態に対して何が出来るかという点
勇紀は記憶を無くしたばかりのリハビリ中。過大なストレスは以前の勇紀に戻る妨げとなってしまう状態。勇紀は誰かを助ける側ではなく、助けられる側でなくてはならない
でも、それは以前の真田勇紀に戻る事を前提とした話。今の勇紀にとって前の真田勇紀なんて他人めいたもの。今の勇紀が前の真田勇紀に義理立てする必要なんてない。なら、今の勇紀が得た記憶の中で困っているひなの為に全力を投じるというのは間違った判断とはならないんだろうな
ただ、それが実質的に前の真田勇紀との決別を意味してしまうだけで

そうして勇紀が行った夢咲への逆襲は真田勇紀という存在を学校というコミュニティから蹴落とすようなもの。それが勇紀の想定通りに進んだなら彼は学校で居場所をなくす。それでもひなを助けられるなら、と綺麗事は言えるけど、あの遣り方を見るにやはり主目的は真田勇紀を徹底的に壊しつつ明日香達と構築したコミュニティを終わらせる事だったんだろうなぁ
そうする事で彼は新たな真田勇紀を始められると考えた

結果は彼の想像を超えた女性陣の強さに救われた形となったのだけどね
本作序盤から三股を受け入れた上で勇紀との関係を続け、勇紀が記憶を無くしても関係を変えなかった彼女らを強い強いと思っていたけど、あのような形で利用されても明日香達は勇紀から離れる判断を下さなかった。彼が今だろうと前だろうと変えない決意を見せた。それは勇紀にとってとても心強い味方であり居場所と言えるのだろうね

ただ、その頼りになる彼女達の中で紗季だけ危険度が段違いな気がするんだけど…
あのようなタイプの紗季がどうして勇紀と付き合い始めたのだろう……?

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ライトノベル
感想投稿日 : 2023年11月18日
読了日 : 2023年11月17日
本棚登録日 : 2023年10月22日

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