アクセル・ワールド1 ‐黒雪姫の帰還‐ (電撃文庫)

著者 :
  • KADOKAWA (2009年2月6日発売)
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本棚登録 : 2029
感想 : 149
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 最初は取っ付き難い印象が非常に強かったのだが、100ページを超えた辺りからそれなりに読めるようにはなった。電撃大賞<大賞>受賞作品。
 ネットツールが進化し国民誰もが首に『ニューロリンカー』と呼ばれる携帯端末を装着している近未来が舞台。主人公のハルユキはその太った容姿から虐められてばかりの無能少年だった。しかし、ある日黒雪姫と呼ばれる生徒会副会長から声を掛けられる。それが少年を変えていくきっかけとなっていく・・・。

 最近ではオンラインゲームを舞台にした系統の作品ではネット上の出来事が現実に影響して、やれ死ぬだとかやれ昏睡状態に陥るとかそんな類の設定が多いように思えるのだが、本作ではネット上に広がる加速空間での出来事は一切現実には影響しない。あくまでもちょっと過激なオンラインゲームとして扱われている(同著者の別作品では上記の様な設定が使われているが)。そういったストイックな部分は私的に評価したくなってしまったりする。
 この作品で扱われている『加速』。これにも上手い設定が使われている。超高速的に動こうものならその後は疲労状態で連続使用などできないという設定が他の作品では見られるが、本作ではポイント制となっており、ポイントがある限り何度でも加速が使えるようになっていることは驚きだった。だから絶対に失敗したくない時などは遠慮無く『加速』すれば出来ないことなどなくなってしまうのだ。一度でもこの美味しさを知ってしまえばおいそれと手放すことはできなくなってしまう。だからこそ、ここでポイントを得る為の設定が上手く活きて来るのだ。

 ライトノベルでは珍しい太っちょで虐められっ子という設定には当初どう反応すればよいのかと戸惑っていたのだが(特にこいつがなぜかモテてしまっていたりとかな!)、中盤辺りからの形振り構わず誰かのために頑張りたいというスタイルを発揮してからは素直に共感できるような魅力あるキャラクターに変貌していたのは驚き。
 ただ、登場キャラクターのほとんどが中学生以下というある意味閉鎖的な世界観の中でどれだけ広がりのあるストーリーを持たせられるかは疑問だけれど、そういった点も含めて今後も注目していきたい一品と思えた。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ライトノベル
感想投稿日 : 2015年10月31日
読了日 : 2009年6月19日
本棚登録日 : 2014年11月15日

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