青春ブタ野郎は迷えるシンガーの夢を見ない (電撃文庫)

著者 :
  • KADOKAWA (2020年2月7日発売)
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本棚登録 : 258
感想 : 9
4

TVアニメやら劇場版やら有ったけど、原作はかなりお久しぶりな本作。
でも舞台を大学に移して咲太の人間関係が若干変わっているせいもあってか、あまり戸惑うことなく読めたかな?

今回、思春期症候群の被害者となるのは表紙にもなっている卯月。その症状とは空気が読めるようになること
今回、卯月が陥る思春期症候群の症状はこれまでと比べたら実害はあまりに少ないもの。本人も周囲も最初はそうと気付かなかったくらいだし
けれど、卯月が空気を読まずに天然発言やらその場を盛り上げる役割を担い、「周囲とは違う」人物で有ったためにそれは単純に空気が読めるようになっただけに収まらないのは面白い

これまでの本シリーズは高校という閉鎖的空間を舞台にそこで見えない苦痛を持ちながら暮らす少女達や、家族や社会の中で上手く生きれない少女達の姿を描いてきた
舞台を大学に移してその傾向がどうなるのかと不安に思っていたけどそれは杞憂だったようで。高校とは異なる、大学ならではの空気感が充分に描かれているね
高校は皆が同じだったから同調圧力が作り出す空気にどう付き合っていくか、という点が問題になったけど大学では皆が同じであるという見える証を失ってしまったから他人と異なる存在になることを恐れるし、異なる者を見下し笑う風潮が存在してしまう
そんな空気を皆が作り出そうとしているから、空気を読まない卯月は特殊な存在となり、いわば浮いてしまっていた

だからこそ、卯月に思春期症候群が発症する理由になるし、症状も他の人にとっては「そんなの当たり前じゃん」と言いたくなるようなものであっても、卯月にとっては世界が崩壊するに等しい衝撃を与えてしまう
空気を読まずに天真爛漫に明るく振る舞っていた少女が自分を取り巻く人々の態度の裏を知ってしまった瞬間の描写はあまりに辛い……

でも、この症状って何も悪い面ばかりじゃないんだよね
思春期症候群ってその症状には無慈悲なものも有ったけど、花楓を除いて本人が望んだ何かが反映されたものばかりだった
その為か、時には本人に何かしら益を齎しそうな場合もあった。
それは今回も同じというか、「周囲が何を考えているか判るようになった」って別に当たり前のことで悪いことではない。卯月も症状を理解した上で今更戻るなんてキツイと言ってるし

なら問題となってくるのはそれとどう付き合っていくかになるわけで
ここで救いとなるのは元々卯月が持っていた本質の部分。卯月は空気が読めなかったけど、それ故にスイートバレットや皆を引っ張る存在でも有った
つまり卯月って「空気」を作り出す側でも有ったんだよね。卯月がそういった傾向を持っていたから、のどかを始めとしたスイートバレットは彼女を中心に纏まってきた
でも、だからといってスイートバレットの面々が卯月に頼りきりだったかといえばそうではなく。
現実を知ってしまって歌えなくなった卯月を、同じように現実を知っていてそれでも卯月が歌う夢を目指してきたのどか達だから卯月に必要な「空気」を作り出すことが出来る
そして、卯月はそれに乗って更に大きな「空気」も作り出せる
あのラストはアイドルものとして王道展開だったけど、それだけにとてつもない程に感動的だったね


そうして穏やかに終わると思っていたら……
何だかラストに色々な意味でとんでもない人物が登場したね!?

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ライトノベル
感想投稿日 : 2020年2月29日
読了日 : 2020年2月29日
本棚登録日 : 2020年2月6日

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