この巻は亜人全体ではなくひかりの話がメインとなっているね
本作って『亜人がいる日常・世界』を優しくも冷静な筆致で描く作品だと思っているのだけど、それ故に個人的な悩みや来歴を深堀りする方面は控えめになってしまっている気がしなくもない
だから、前巻で明かされた京子の生育環境やこの巻で明かされたひかりとひまりの物語は非常に貴重なものであるように思えた
本作では亜人って『普通』とは異なる点が明確なだけでそこまで『異常』ではないと何度も形を変えて示されているように思うのだけど、その亜人の中でも他者への影響を持つサキュバスやバンパイア
3巻でサキュバスと社会の関わりは示されていた。だからこの巻で示されるのはバンパイアが人間社会の中で生きる上での他人との関わり方
他人の血を欲するバンパイアに血は必須。だというのに何故か申請しないと血が貰えないというのはひまりが主張するようにおかしな話。申請が必須ということは自分の子供は『血が無いと生きていけない子』なのだと受け入れなければいけないという事
小鳥遊家は当初、この認識を避けていたために問題が起きてしまった。
そんな中でひまりが真っ先にひかりの本質を受け入れて納得して、更に脅しつける世間=おばさんに力強く反論してみせたシーンは良かったね
今ではひかりが面倒事を起こしてひまりを困らせるような展開が目立つような気がするけど、それはひかりが安心して甘えられる場所をひまりとの関係性の中に見つけられたからなのだろうね
ただ、家族の中に安心出来る場所を見つけられてもそれをそのまま社会に当てはめられるわけではない
ひかりがいつもの髪型を崩していつもと違った時間に鉄男に会いに行こうとしたのはそういった不安の現れかな?
ひかりが亜人ではなく『デミ』と表現したことに感銘を受けていた鉄男
亜人を大好きだと語っていた鉄男に拠り所を見つけた
まるで寂しさを埋めるかのように、一方で感謝を伝え合うかのようにハグする二人の様子はなんだか良いね
次巻予告は大仰な……
本当にそんな瞬間は訪れるのだろうか……?
- 感想投稿日 : 2020年11月29日
- 読了日 : 2020年11月28日
- 本棚登録日 : 2020年11月21日
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