白痴 (新潮文庫)

3.58
  • (201)
  • (221)
  • (521)
  • (33)
  • (10)
本棚登録 : 2514
レビュー : 266
著者 :
takayuki1016さん  未設定  読み終わった 

ジャンクなまぜそばみたいな作品。デカダン派、無頼派というジャンルの先駆者だそうで、ねじ曲がった男女の情愛をもつれさせて絡ませてぐちゃぐちゃに混ぜて一気に飲み込ませようとする。無骨で野卑。だからまぜそば。あと読むと何だかやるせなくなるところも一緒。

7編あるうち毛色が違うなと感じたのは「母の上京」で、これは動きがあるだけでなく考えさせられることが多かった。なかでも「花咲く木には花の咲く時期がある(86項)」は名言。坂口安吾の痴情がふんだんに盛り込まれているし、こんな文章実体験でもないと本当に書けない、ある意味ルポルタージュの域にあると思う。

と、同時に母に対する情愛が描かれているのも特徴的。「世の常の道にそむいた生活をしていると、いつまでたっても心の母が死なないもので、それはもう実の母とは姿が違っているのである。切なさ、という母がいる。苦しみ、というふるさとがある(98項)」もぐっとくるなー。解説にもあるとおり、観念と現実の対比を鮮やかに描き出しているのは他作品にも共通するところ。

観念と現実の対比。自分の欲望を他人に通して生きやすくすることが観念だとするなら、その通りに行かずもがき苦しむのが現実。噛み砕きすぎなのは重々承知。結果そりゃぁ退廃的で厭世的にもなりゃあな。ことそれが男女間であればよりビビッドに描けるぞということで、ことあるごとに狂った女性が出てくるのではないか。邪推にもほどがあるけど。

事前に堕落論を読むことをおすすめします。作者が言いたいことを具体に落とし込んだものがこの「白痴」だと思うので。

レビュー投稿日
2018年6月28日
読了日
2018年6月28日
本棚登録日
2018年6月28日
4
ツイートする
このエントリーをはてなブックマークに追加

『白痴 (新潮文庫)』のレビューをもっとみる

『白痴 (新潮文庫)』のレビューへのコメント

まだコメントはありません。

コメントをする場合は、ログインしてください。

いいね!してくれた人

ツイートする