ベーシックインカム

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本棚登録 : 166
レビュー : 32
著者 :
今野隆之さん 井上真偽   読み終わった 

 井上真偽さんの新刊は、これまでとはかなり毛色が異なる。SFミステリの短編集だという。ゴリゴリのSFはあまり得意ではないが、ミステリ作家・井上真偽の作品ならば、読んでみよう。

 全5編中、最初の4編は、それぞれ現代でも耳にするキーワードがテーマ。「言の葉の子ら」。日本語を学習中の保育士が、ある園児の異変を見抜いた。彼女にしかできない方法で。彼女の正体は漠然と予想はできたが、姿はかなり違っていた…。子供の方が順応しやすいのは、現代と同じか。

 「存在しないゼロ」。タイトルから内容は想像できまい。山間の豪雪地帯で起きた不可解な事件。背景には、未来世界ならではの理由があった。それは現代でも深刻な問題だが、このような技術の進歩は、人類にとって福音なのか否か。

 「もう一度、君と」。VR(Virtual Reality)という言葉が持て囃されたのはかなり前のことだが、技術は着実に進んでいる。いずれはここまで進むのだろうか。誰だって最初から自信などない。こればかりは、技術が解決してくれない。

 「目に見えない愛情」。人工視覚の実用化に目処が立ってきた世界。生まれつき目が見えない娘に、被験者になるチャンスが巡ってきた。何としても手術を受けさせたい。そのために、父はどうしたか。親心に現代も未来もない。

 最後にやや長い表題作「ベーシックインカム」。このキーワードは聞いたことがあるが、技術用語ではない。作家らしい男性と、恩師の教授の駆け引き。時代は現代のようでも未来のようでもあるが、本作中初めて本格ミステリらしい内容。

 推理そのものはアナログなのが、井上真偽らしい。注目すべきは動機だろう。AIによって多くの仕事がなくなると言われている。技術の進歩は、必ずしも幸福とは結び付かないかもしれない。しかし、流れを止めることはできない。

 環境保護を訴える機運も高まりつつある昨今。テクノロジーがもたらす未来に、夢や希望はあるか。でも、もはやスマホは手放せない。

レビュー投稿日
2019年10月9日
読了日
2019年10月9日
本棚登録日
2019年10月9日
2
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