ラフカディオ・ハーンのことは知っていたし、
出雲市の小泉八雲記念館にも行ったことはあったが、
作品を読むのは初めてであった。
怪談と聞くと「怖い話」のイメージがハッと浮かぶが、
その概念をいい意味で打ち砕いてくれる作品。
ハーンの書く文体が誠実というか中立的というか、
あった(聴いた)できごとを、それこそ忠実に再現したかのような、
読んでいて読み心地のよい文章で、
それが本当の意味での「怪談」なのだと実感することができた。
印象に残ったフレーズはを挙げると、
「世に、怒り死ををした人、あるいは憤りのためにみずから命を断った人、
こういう人たちのいまわのきわの念願や誓言は、
なんらかの超自然な力をもっていると考えられている。」
(「鏡と鐘」)
「『なぞらえる』という―この動詞ではじゅうぶんに説明がつかないけれども、
ともあれ、それにいくらか意味の近い、
一種の精神作用による妙な力をもったものがある。」
(「鏡と鐘」)
「蝶」「蚊」「蟻」の研究も興味深く読むことができた。
単にそれだけでもじゅうぶんに緻密で深く語っているが、
それが、怪談にうまくシンクロしているようすが、
じんわりと広まっていくように感じることができた。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
小説
- 感想投稿日 : 2012年1月26日
- 読了日 : 2012年1月24日
- 本棚登録日 : 2012年1月26日
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