古本で購入。
フリーカメラマン一ノ瀬泰造の日記と両親や友人に宛てた書簡などで構成された本。
激動のインドシナの戦場と日常が、「全身がシャッター」の男の目を通して見えてくる。
戦場の描写は時に滑稽で時に凄惨だけど、「戦争に対する怒り・憎しみ」のようなものはそれほど前面に出ていない。
理不尽な暴力や差別に見舞われる人々への同情・優しさを感じる箇所が多いだけに、少し不思議な感じ。
NHKの番組に出演した際、あまりに戦争を楽しそうに話すから放送されなかったこともあるとか。
戦場を駆け回って命がけで写真を撮る戦場カメラマンっていうのは、やっぱり常人では測り難い精神構造をしているのかな。
「アンコールワットを撮りたい。できればクメール・ルージュも一緒に」
その願いを抱いてアンコールワット単独潜行を試み、消息を絶った一ノ瀬泰造。
その9年後に遺体が発見され、クメール・ルージュによって処刑されたことが判明したという。
カンボジアを愛した男は最期に何を見たのだろう?
彼が若くして死んだことがわかっているだけに、途中に挿入される両親の手紙や日記が非常につらい。
戦場カメラマンのルポルタージュであると同時に、ひとつの家族の物語にもなっている。
ベトナム戦争ルポルタージュの傑作、開高健『ベトナム戦記』と併せて読んでほしい本。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2013年8月16日
- 読了日 : 2013年8月16日
- 本棚登録日 : 2013年8月16日
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