カラー版 遺跡が語るアジア (中公新書 1745)

著者 :
  • 中央公論新社 (2004年4月25日発売)
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感想 : 9
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古本で購入。

著者がアジア各国で撮影した遺跡の写真と文章が収録されている。
個人的な趣味・興味のありどころによるのか、インドを中心にした南~西アジアが多い。

「アジア」と銘打ちながらアウシュビッツが収録されているのは奇異な感じがするが、アジアの遺跡では悠久の時によって浄化された「人間の声、痛み」が生々しく残る場所として取り上げられている。
アジアの遺跡が「問題をかかえてあえいでいる姿に目を向けようと」する著者にとっての、言わば原点なのだ。
写し出される絶滅収容所は、まさに最たる蛮行の痕。「負の遺産」という言葉すら軽いその光景に対する、著者の怒りが滲み出ている。

ところで著者がアウシュビッツで見たという「人間石鹸」だが、結局事実なのだったか。
たしかガセだったという記憶があるのだけど…

人間の手により失われつつある遺跡が多く取り上げられる中、個人的に惜しいと思うのは旧朝鮮総督府。
これは「失われつつある」ではなく「失われた」だが、「植民地支配の象徴にして目障りな建物」ゆえに破壊するというのは、歴史との向き合い方として間違っている。破壊に対して喝采を挙げるなど幼稚だ。
たとえ負の遺産であっても、そこに宿る歴史を保存し伝えることは重要だと思うのだが。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2013年8月31日
読了日 : 2013年8月31日
本棚登録日 : 2013年8月31日

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