多動性障害児: 落ち着きのない子は病気か (講談社+α新書 28-1B)

著者 :
  • 講談社 (2000年8月1日発売)
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ADHDという言葉を最近ずいぶん聞くようになりました。注意欠陥多動性障害。注意が足りないので、授業に集中できない。先生の指示に従えない。忘れ物が多い。多動性があり、じっとしていられない。すぐ立ち歩く 。手足を動かしつづける。しゃべりすぎる。衝動性があり、順番を待てない。人の話を最後まで聞かずに答えてしまう、などなど。こういう生徒が1クラスに平均1,2人いると言います。原因はよく分かっていません。遺伝的な要因もあるかも知れないし、食べ物、環境ホルモンなどの影響もあるかも知れません。親のしつけ方が悪いというのはあたっていません。脳の機能的な障害があるのは間違いなさそうです。リタリンという薬がよく効くそうです。アメリカではADHDと診断された子どもたちの多くがこの薬を飲んでいます。しかしこの薬には覚醒剤と同じようなはたらきがあり、直接脳にはたらきかけるため、ヨーロッパや日本では使いたがらない医師も多いそうです。実は私自身はこのテーマにそれほど興味を持っていたわけではありません。ところが、身近でそのような子どもを見る機会があり、いくつかの本にあたってみました。日本ではそれほど多くの書籍が出版されているわけではありません。が、数年前「ジャイアン・のび太症候群」という本が発売され、ADHDという言葉が広く知られるようになりました。いくつかの本を読んだり、話を聞いたりしていると、専門家の間でもずいぶん考え方が違うということが分かりました。本書は、私の感じでは、中立的な立場で書かれているので、私がこの問題に対してどのようなスタンスで臨めば良いかが分かったような気がします。ここからは私見。データ的にADHDの子どもは増えているかも知れないが、それはこの言葉自体が広く知れわたるようになったことと、基準自体がある程度はっきり決められ、しかもそれが低い基準になっていることが影響しているように思える。教室環境がADHDの子どもにとって居づらくなっているかも知れない。ADHDと一言でいっても、個人差が大きく、薬が必要な子ども(たぶんこちらを病気と呼ぶ)もいれば、ふつうのしつけの範囲で何とかなる子ども(こちらは性格)もいる。ただ、その子の状態を親や教師がちゃんと理解していないために、しかり方を間違う。そのために、本人の自尊心を傷つけ、ひいては「行為障害」へと移り犯罪行為にまで及んでしまう。そうならないためには、その子どものことを大人がよく理解して、その上でその子どもが過ごしやすい環境を整えていく必要がある。もちろん、悪いことは悪いと知らせる必要はある。しかり方に注意が必要なのだ。いろいろ本を読んで感じたことは、実はADHDの子どもにとって良かれと思っておこなう行動はすべての子どもにとっても有効にはたらくということです。大人が、それぞれの子どもにとって一番良い教育を心がけていく必要があるのでしょう。

読書状況:未設定 公開設定:公開
カテゴリ: 教育
感想投稿日 : 2015年10月22日
本棚登録日 : 2015年10月22日

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