20世紀は物理学の時代と言われた。とくに、20世紀前半は「物理帝国主義」などと言い、すべての科学は「物理学のものの見方」を見習うようにとまで言われていた。また、アインシュタインの相対性理論やボーア、ハイゼンベルグらの量子力学は思想界全般にも非常に大きな影響を与えている。原爆もコンピュータもここから生まれる。20世紀後半の科学技術の進展は量子力学の発見なしにはあり得なかった。しかし、今は「物理学の時代」は終わったと言われる。21世紀は「生物学の時代」である。とくに脳の研究がさらに進められることであろう。本書では、20世紀物理学の発展から衰退までを、1つはアメリカ物理学会による全く個人的でない文章により、そしてもう1つは著者自身の思い入れも入れて語られている。著者は日本の物理学界(とくに宇宙物理)の中心的存在でもある。ビッグサイエンス(お金のかかる実験などをさす)となってしまった物理学と社会との関係、アメリカでの科学者と科学哲学者の論争(サイエンスウォー)などについての記述も実感がこもっていておもしろい。今世紀物理学全般、また科学者がどのようなものの見方をするのか、などを知るのに役立つだろう。
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カテゴリ:
物理学
- 感想投稿日 : 2015年11月12日
- 本棚登録日 : 2015年11月12日
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