葬送 第二部(上) (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (2005年8月28日発売)
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感想 : 35

物語は音楽家ショパンの葬儀から始まる。そして、少し時をさかのぼってショパン最晩年が描かれる。登場人物はショパンがながらく愛人として関わってきたジョルジュ・サンドとその家族。たくさんの知人。そして、友人の画家ドラクロワ。このドラクロワの繰り広げる芸術論、天才論、友人論などが非常に興味深い。ドラクロワとショパンの会話などにはぐんぐん引き込まれていく。第1部500ページ、第2部700ページの大作である。ベストセラーとなり、新聞の書評などでも何度も取り上げられていた。私は著者自身に興味があったわけではない。今まで同じ著者の本を読んでいるわけでもない。ただ内容にひかれて、でも最後まで読めるかどうか分からないから、書店で買うのではなく、図書館で借りて読んだ。だいぶ待ってやっと手に入った本、私自身も1部、2部合わせると結局3ヶ月くらい借りていたことになる。他に読みたい人もいただろうに申し訳ない。小説であるから、内容については一々触れない。長編だけれどもぜひ一度読んでみてほしい。ショパンの生きた時代、19世紀中頃のパリを中心とする世の中の様子が手に取るように分かる。馬車を使って移動しているようだけれど、汽車も走っていたようだ。パリでも革命が起こり、世の中が大きく変わろうとしていた。ペストがはやりたくさんの人がそれにおびえ苦しんだ。ショパンやドラクロワそれ以外にたくさんの実在の人物が登場、あるいはいろんな形で描写されているが、どこまでが真実でどこからがフィクションなのかまったく分からなくなってしまう。はじめは少し時代の雰囲気になじめず、時間がゆっくり流れて退屈に感じたが、途中からは一人ひとりの人物描写にどんどん吸い込まれていった。久しぶりに小説を読んで、よい時を過ごすことができたと思う。ドラクロワの絵も観たいし、ショパンの音楽ももっと聴きたくなった。そして、ぜひパリにも行きたくなった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2015年8月15日
読了日 : 2023年4月9日
本棚登録日 : 2015年8月15日

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