吃音で悩んでいた著者の、小学生から大学入試までを振り返ったお話です。転校がやたらと多く、そのたびに、自己紹介でキヨシのキがつまって言えなくて、笑われたり、いじめられたり、意思疎通がうまくできない。でも、いっしょに野球をして一目おかれたりもする。作文は抜群にうまくて、小学校の卒業前にクラスで思い出の劇をする。その台本をまかされる。苦手なことがあったとしても、何か自信の持てるものがあるというのは強いなあ。中学生にもなると、そういうこと(吃音のこと)をバカにしてはいけないと正義をふりかざす女子生徒が出てくる。けれど、それを素直に受け入れることもできない。ゲルマというふしぎな友人が登場する。いいやつなんだか、いやなやつなんだか。大学入試では地元の国立大学を受験せず、早稲田を目指すことになる。そのころ付き合っていた大学生の彼女の気持ちがせつない。先回りして、彼がつっかかって言えないことばを、彼女が先に言ってしまう。好きだから、あなたが何を言いたいのかが分かると言う。けれど、それは本当に自分が言いたいことばではないことがある。コの音が出ない。コーヒーと紅茶。本当は自分はどちらがほしかったのか。彼女と離れたかったのかもしれない。一人でやってみたいという思いで東京に行く決心をする。先生になりたかった。朝から晩までしゃべる仕事なのに大丈夫かと父親は言う。しかしその後、「まあ、でも」と続けて言う。「きよしはぎょうさん転校してきたけん、いろんな先生にも会うたし、いろんな町の、いろんな友だちにも会うてきたんじゃけん、意外といい先生になれるかもしれん。」私も、その通りだと思う。やはり、図書館で借りて読みました。
- 感想投稿日 : 2014年11月26日
- 本棚登録日 : 2014年11月26日
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