八月の博物館 (角川文庫)

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本棚登録 : 454
レビュー : 55
著者 :
制作 : 影山 徹 
takitakiさん 瀬名秀明   読み終わった 

自分は決して理系の人間ではない。
だから、『パラサイト・イブ』も『BRAIN VALLEY』も中学生の頭には、ポカンの一声だった。
だが、文庫本570ページに及ぶ長編を食事も忘れ、文字通り高一の夏休みの二日間飲まず食わずで読み切ったのは、生涯この作品が最初で最後だろう。

その作品が『八月の博物館』である。

終業式帰りに「ミュージアムのミュージアム」という奇妙な館を見つけた小学生・トオル。
エジプトに魅せられた十九世紀の考古学者オーギュスト・マリエット。
小説とは何かを問い続ける理系作家。
三つの話がそれぞれにスタートし、やがて“物語”の名の元に“同調”する。

不思議な少女・美宇と黒猫・ジャック。謎の紳士リチャード・ガーネットに満月博士。
幼馴染み、啓太と鷲巣。恋人の有樹。
ハッサン、カンピュセス、カーとバー、そしてアビス。


メタフィクションという言葉がある。だが、あくまで“物語”を神聖視し、出会った“物語”と生み出した“物語”、そして“物語”の中に生きるということを、ここまでファンタジックに書ける作家は、瀬名秀明しかいない。

それは理系作家としての顔ではなく、ドラえもんのSF(すこしふしぎな)感性に触れてきた、物語作家としての顔が為せた作品である。


物語にははじまりとおわりがある。
終わってしまえば、その後には何も続かない。

でも、あの八月の二日間。
『八月の博物館』に出会った時のトキメキは、ずっと忘れない。

レビュー投稿日
2009年7月6日
読了日
2010年9月13日
本棚登録日
2009年7月6日
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