晩年 (新潮文庫)

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本棚登録 : 3455
レビュー : 245
著者 :
takumi2017さん  未設定  読み終わった 

2017.7.31
猿面冠者、彼は昔の彼ならず、ロマネスク、玩具、陰火、めくら草紙が、印象的だった。
太宰といえば暗く自意識的な小説を書くイメージだけど、こういう、小説らしい小説というか、物語も書くんだなぁと。ロマネスクなんてまさにそう思った。
でもやっぱどこか、私の印象に残る作品の端々には、人間失格の香りが、ダメ人間の美しさの香りが残っているような、そんな感じを受ける。
何をしてもダメな人間、なにをどうあがいても自らの首をしめるだけの人間、この美しさはどこから来るのだろうか。どこかこの、退廃的な、デカダン的な美しさに、憧れてしまう自分がいる。しかしそこに幸福はない。憧れているうちは本物を知らない。外から見れるうちは甘美なものだろう。幸せで力強く、そういういわゆる理想の人間に対しては感じない美しさ。例えどれだけ能力を持って、影響力を持っている人間でも、そういう自分に対する姿勢が、肯定一色ならば私は評価しない。お花畑の善人も、開き直った悪人にも、私は肯定しない。その人と、その人自身との関係こそが、美の源泉であるように思える。
美とは生と死の混濁であるという趣旨の言葉がある。有と無、肯定と否定、プラスとマイナス、そういうものの間に美があるように思える。だから、善一色も、悪一色も、美しくないのだろう。二元の間にいるとはどういうことか。求めながら、至ることはないということだろうか。完成した人間は美しくない。諦めた人間も美しくない。理想に憧れ続けながら、現実に虐げられ続ける人間が美しいのか。
なんて、理屈をこねてもしょうがないか。二元の間ならば、理屈と、感覚の間にもあるだろう。言葉にしようと努めるけど、全く形を与えきれない、そこにもなにがしかの美しさがあるのだろうか。言葉にできたと思っても、無理だ諦めようと思っても、美しくないのだろうか。うーん。

レビュー投稿日
2017年7月31日
読了日
2017年7月31日
本棚登録日
2017年7月31日
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