ケン・リュウが選ぶ気鋭の中国SF作家の短編集
「折りたたみ北京」の評判をどこかで見て、いつか読まなきゃと思っていたのですが短編だったのか。今勢いのある中国SFのいろんな作家の作品を読めるということでとてもお得な本だったと思います。
僕が印象に残ったのは馬伯傭の「沈黙都市」で、オーウェルの1984のオマージュなのですが、しかし残念ながら中国(とロシアなどの専制国家)の言論統制を思い起こさずにはいられなくてそこはかとない皮肉を感じてしまいます。あとは劉慈欣の短編2編はいずれも独特で、特に「円」はそのまま三体のエピソードのひとつにもなっていますが、こういう、なんというか乾いた感じで皮肉や風刺を滲ませるのは劉ならではの文体と構成なのかな、と思わされました。「神様の介護係」なんて劉らしいハードSFの要素を絡ませつつ、本当にシニカル。
全体を通して興味深いのですが、なんだか寂しい、悲しい話が多かったように思います。また、中国のSF作家たちが自分達の国と社会をどう見ているのかもわかったような気がして、実はコレが一番興味深いことでした(三体や荒潮を読んだ時も感じたのですが。まあ、とはいえ社会の中にディストピアを見出そうとするのはSF界の普遍的な傾向なのかもしれませんが)。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2023年8月18日
- 読了日 : 2023年8月18日
- 本棚登録日 : 2023年8月18日
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