八犬伝 上 (朝日文庫 や 2-1)

著者 :
  • 朝日新聞出版 (1986年3月1日発売)
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本棚登録 : 152
感想 : 25
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二十八年かけて綴られた日本古典文学東の伝奇名作「南総里見八犬伝」、それを綴った後期読本の代表作家・曲亭馬琴。虚の世界では八犬士達の数奇な運命と冒険譚が描かれ、実の世界では馬琴とその奇妙な友・葛飾北斎との対話が描かれる。

あらすじを書いてて気付いたのですがこれ私の好きな二つの視点で進む話なんですね。春樹の世界の終わり~とか海辺のカフカとか1Q84とかみたいなやつ。たまたま私が八犬伝好きで八犬伝ものを今手当たり次第読んでるから八犬伝とそれを書いた馬琴さまの話、という風に取れますが、八犬伝について良く知らないとか初めてと言う人にとっては二つの視点でそれぞれ進む物語みたいな風に思うかも。
上巻だけではまだ何とも言えませんが、馬琴さまのパートがとても好き。私は八犬伝好きでも馬琴さまについてはほとんど何も知らないので、私にとっては馬琴さま入門の書という感じです。彼自身も武士の家であるけれど不遇な運命に翻弄され、辛い時代を耐え忍んできてやっと読本作者という道を見つけ、その職に頑固なまでのプライドをもって読本を書き続けているという……という姿勢を見ると、馬琴さまももう一人の犬士なのかなあなんて思ったりしてちょいホロリと来ました。
八犬伝パートの方も原典に結構忠実ながら赤岩一角と角太郎が既に番作・信乃親子と会っていたとか、そういうオリジナルな流れもあって楽しめる。というかどんなオリジナリティがあるかが肝ですよね。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 古典
感想投稿日 : 2012年11月6日
読了日 : 2012年11月4日
本棚登録日 : 2012年10月26日

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