素晴らしい。わたしも鷹原と柏木くんと共に19世紀ロンドンに存在していた。
切り裂きジャックとエレファントマンは同じ時代だったんだ。
ここではジャックの正体より、この時代の退廃したロンドンとそこに生きる人たちを中心に描いている。
同性愛者であることを隠して生きていかなければならなかったスティーヴンとドルウェット、娼婦として生きて行くしかなかったメアリ、抑圧や鬱屈を排出できず爆発させてしまったトリーヴス医師、見せ物として晒され壮絶な人生を歩んできたにも関わらず感謝と敬意しか示さないエレファントマン。
そして語り手である柏木くんも絶賛モラトリアムである。
容姿端麗で頭脳明晰な完璧超人な鷹原ですら、実の母が娼婦であった過去を持つ。
非常に鬱々としながらも青春小説のような爽やかさもある。
そして何より、はじめと最後に老人になった柏木を置き回顧という形をとるのがエモすぎる。時代を超えたヴァージニアからの手紙。何十年越しに届くスティーヴン氏の手紙。そしてエレファントマンとトリーヴス医師の真実。
とても切なく、大きな存在感を残す作品である。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
未設定
- 感想投稿日 : 2020年4月5日
- 読了日 : 2020年4月5日
- 本棚登録日 : 2020年4月5日
みんなの感想をみる