夫が邪魔 (徳間文庫)

著者 :
  • 徳間書店 (2019年6月11日発売)
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感想 : 35
4

女は怖い。
男はどうしょーもない。
この本で起きる事件は、大体が、男の自業自得である。
女の方とて、それなりにブーメランを喰らうのだが、女が怖いのは、ブーメランを恐れないからだ。
男は保身をする、ずるい生き物。
女は刺し違えてもいいと思っている。

女は弱いから、自分に逆らわないと思い込んでいてはいけない。
自分が女の上に君臨していると思い上がってはいけない。

しかし、出てくる女性が皆、ちょっと狂気。
なぜそこまで固執してしまう?
なぜ尾行してしまう?

全てに「やられた!」と思うオチが付いていて、それでもまだ何かが始まりそうな不穏さを孕んでいる。

『夫が邪魔』
趣味の良い邸宅に住まう、人気小説家・朝倉夕子。
彼女の小説が売れ始めると共に、夫が執筆をさせまいと完璧な家事を強要してくるようになった。
ある日、熱狂的なファンと名乗る、片山京子から、家事をお手伝いさせて欲しい、という手紙が届く。
「夫が邪魔」は、「朝倉夕子」とともに脈々と受け継がれていくのか。

『マタニティー・メニュー』
元彼と結婚した女の妊娠を知る。
女性特有の病気で子宮をとってしまった柿沼よしみは、子宮のある女に嫉妬する。

『二十五時の箱』
妻のいる男の子供を孕ってしまった、小倉香陽子(おぐら かよこ)が羽田空港のコインロッカーに入れたものとは?

『左手の記憶』
スキーに行って右手を骨折した作家・佐伯郁弥(さえき いくや)はワープロを打つにも苦労する。
生まれつきでは左利きだったのだが・・・
口述筆記のために雇った女性の正体とは?

『捕えられた声』
あなたの声が好きなんです。
気持ちの悪い電話。

『永遠に恋敵(ライバル)』
怖い女たちだが、どこかコミカル。
彼女たちの見栄の張り合いと負けず嫌いのために事件が起きたようなものだが、男の人生が壊れても、それは終わったもの、と切り捨てられるのがすごい。

『殺意が見える女』
由美は、喫茶店で離婚届を凝視している女を見て、激しく興味を引かれた。
自分と似ている。
「夫が邪魔」と構造が似ているかもしれない。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2021年10月26日
読了日 : 2021年10月26日
本棚登録日 : 2021年10月26日

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