図書室のキリギリス

著者 :
  • 双葉社 (2013年6月19日発売)
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キリギリスは、高良詩織。
学生時代は旅行や合コンに明け暮れ、卒業の条件ではなかったので、教職員資格も取らずに教育学部を出た。
夫の失踪で離婚が確定し、ライターの収入では心細い。
学生時代の友人、コツコツとと勉学に励んで音楽教師になったアリ(?)井本つぐみは、勤務する高校で図書館司書を探している、と紹介してくれた。

キリギリスと称された割には、詩織は勤勉で真面目に映る。
元々本に詳しかったのと、雑誌のライターだったということもあり、司書の能力もめきめきと揚げていく。
詩織には、物に触れる事で、そこに刻まれた思いを感じ取るという能力がある。

学校図書館の、しんと冷えてちょっとカビ臭いようなイメージが懐かしい。
公立図書館とはまた違った感じがします。
一時間目、二時間目…という時間の区切りも学校ならでは。

詩織は、学校に勤務する大人として、高校一年から三年生という狭い年齢層の来室者を相手にすることとなる。
彼らの、読書面で、または人間面での成長を見守りながら、自分の人生、大人として、女としてのトラブルにも向き合わなくてはならない。
表と裏の顔のようだが、裏が表に出て、図書館での活動を通して、生徒の何気ない行動が無邪気に秘密を引き出し、自分でも気付かなかった真相に辿りついたりするのだ。

高校生たちの描かれ方が少し幼いように思えます。

『司書室のキリギリス』
詩織、司書の資格を持たずに「学校司書」に採用される。
早速本を寄贈に来た、校長先生。
寄贈者の名を「円花蜂」にしてほしいという。

『本の町のティンカー・ベル』
詩織にていねいな手引書を残してくれた、前任者の永田さん。
彼女の足跡を追う。

『小さな本のリタ・ヘイワース』
一年生のオリエンテーション。
図書室の説明をして、必ず一冊、本を選んで借りてもらう事。
そこから、謎と縁が生まれる。
よその高校の蔵書印のある本、見たかった写真が載っていない本。

『読書会のブックマーカー』
図書委員の有志による読書会。
星野道夫の「旅をする木」の中から「十六歳のとき」
詩織が大隈君に貸した本の中にはさんであった鳥の羽。

『図書室のバトンリレー』
スガシカオの「1095」
三年間という日数。
高校の三年間。
失踪人との離婚が認められるのも三年間。
意外なところから夫の消息を知る。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2017年7月26日
読了日 : 2017年7月26日
本棚登録日 : 2017年7月26日

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