さらりと読める。ドラマや漫画でよく見るいかにも主人公然とした人間は登場しない。等身大の人物が気さくな文章で綴られる。今日隣であれこれ繰り広げられている人生の一幕を切り取って紹介されたようで、時々居たたまれないくらい物悲しく、ほんのり嬉しく、共感しては胸に染みる。「スピードキング」で野球を追いかけた旧友の誘いを、表向き配偶者にかこつけて断った主人公の感情の機微は、誰しもどこかで感じたものではないかと思う。
哀切が持ち味と書評にあるけれど、この人のクスッと笑えて前向きになれる話がとてもいい。その意味で「僕と彼女と牛男のレシピ」は自信をもって人にオススメできる。
「君を守るために、」「ダブルトラブルギャンブル」一読の価値あり。
前向きなのに切ない「人生はパイナップル」が一番心に食い込む作品だった。「わかりやすい言葉に踊らされる奴は、自分の頭で考えることができない馬鹿だ」って、じいちゃんの言葉が刺さる。万人に認められる人物じゃなくたって、周りからどう言われていたって、人は必ず誰かにとって掛け値無しの一人だと思い出させてくれる。
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- 感想投稿日 : 2019年10月18日
- 本棚登録日 : 2019年10月12日
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