一気読み。
南星屋に出入りする菓子好きの中間が実は…ということで、読み進めれば進めるほど、謎は深まっていく。
しかし、終わりの方には、先がまた読みたくなるような仕掛けがある。はやく次の本出ないかなぁ。

2024年3月27日

読書状況 読み終わった [2024年3月26日]

前作に引き続き、どんどん読んでいった。

南星屋の治兵衛は菓子職人雲平との出会いによって以前に増してのびのびと生きていっているようだ。来し方は変えられないかもしれない。でも、模倣することから自分自身のオリジナリティが加味されたお菓子を作ることに変わっていくこと自体が治兵衛の「自分の生き方」をバージョンアップしていくことにつながっているようだ。
「亥の子ころころ」では雲平が探していた「尋ね人」も見つかる。なるほど、そうなったか!であった。

どのキャラクターも魅力的で、続きがすぐに読みたくなった。

2024年3月24日

読書状況 読み終わった [2024年3月24日]

図書館で最初に見つけたのは続編「亥子ころころ」で、それを読む前に改めて図書館に探しに行った。

やはり、こちらを先に読んでよかったと思った。

南天屋治兵衛に焦点化され、物語は進んでいく。
治兵衛が関わり合う出来事がお菓子とともに語られていくところがおもしろい。テレビドラマの時代劇を見る感覚なのだけれど、勧善懲悪ではないところがおもしろい。
続きを読むのが楽しみだ。

2024年3月22日

読書状況 読み終わった [2024年3月22日]

読み始めたら一気読みだった。
ひとつひとつの物語が逸品なのだ。使われていることばも通俗的な市井を描いた物語であるのに、通俗的でなく意外と丹精込められている。

今回は「吉」という若い女性のことですっと糸が通っているようだ。
1巻目のおわりには「とむらい屋」の人々が少なからずなんかしら重いものを背負っていて、その重いものに折り合いをつけた、と自覚するような物語が展開される。「誰かに何かされたから」は作られた物語だった。記憶は生き埋めになっただけで、本当に生きるためには封印されていた埋められていた事実に向き合わないといけない。

死者をきちんと弔うことは生きる者に必要なことなのだ、たしかに。生きる者が折り合いをつけて生きていくことは淡々と、本人が意識せずとも毎日は続いていくものなのだ。

つづきが読みたい。

2024年3月20日

読書状況 読み終わった [2024年3月20日]

図書館で見つけた時代物。「弔い」を生業にする颯太を中心にした群像劇のような物語。
ひとつひとつ、あまり重々しい気持ちにならず、しかし、どこか心に残るくらいの重みがある話ばかり。
「火屋の華」は火事の最中に過去にあったことを思い出して、それが結末につながっている、という語りの組み立て自体が話の面白さにつながっていると感じた。颯太という人物がどういう人物なのかがそれまでは弔いを出すことを通して見えてくるだけだったのが、この話では颯太自身のそれまでの生きた証のような経験とこれから(生きること、生き方)とが一本の線でつながっていた。
「儒者ふたり」もよかった。自分らしく生きて、死ぬ、ということがよくわかる話だと思う。自分らしくというのは決してポジティブなだけでなく、ネガティブなことも含む。変な正義感だけではないところが余計によいと思った。

2024年3月9日

ネタバレ
読書状況 読み終わった [2024年3月9日]

背筋が凍ると言ったらいいのか、どれもなんとも言えない気持ちになる話ばかりだ。だか、どれも惹きつけられる魅力がある。

「ホテル・カイザリン」「孤独の谷」「未事故物件」がよかった。「金色の風」は語り手がパリでどんどん変容していくのがわかってほっとしながら読めた。しかし、語り手自身の境遇や語られるパリに来るまでの気持ちを考えるとやはりダークの極みだ。

2024年3月3日

ネタバレ
読書状況 読み終わった [2024年3月3日]

宮部みゆき「あやし」の読後、その余韻を感じながら手にとった。なので、あえて「蜆塚」は読んでいない。
よかったのは、朝井まかての「ぞっこん」と三好昌子の「韓藍の庭」かな。どちらも、語りぶりがよかった。「ぞっこん」は最初、え、これって大鏡の雲林院菩提講?みたいな感じだった。そしたら、なんと、供養されるのを待つ付喪神の話だったのでなるほど、と、膝をついた。「韓藍の庭」は京の都下鴨のあたりが舞台。人のあわいにいる「もののけ」の哀愁を感じられた。

2024年2月25日

ネタバレ
読書状況 読み終わった [2024年2月25日]

宮部みゆきらしい、おもしろい話が詰まっている。「語りの妙」を感じさせる怪奇譚だ。
とくによかったのは「安達家の鬼」かな。「蜆塚」もよかったし、「灰神楽」も「女の首」もよかった。

2024年2月23日

読書状況 読み終わった [2024年2月23日]

京都を舞台にした短編が集められている。
図書館で「京都」という題名に惹かれて手に取った本。惹かれたときに持っていた「京都」のイメージは、私のある意味、先入観に過ぎなかったんだな、と思った。
読んで本当によかった。
観光地として内外の人々が知る場所ではなく、そこで生きる人々の市井の生活が書かれているから。
印象に残ったのは「深草稲荷御前町」と「吉祥院久世橋付近」。先に読み進めるたびに種明かしされるようで、どうなっていくのか気になった。

2024年2月18日

読書状況 読み終わった [2024年2月18日]

 図書館で偶然見つけて数ページめくり、そのまま一気読みでした。読み始め、読み終わることが山本さんの生涯の終わりなんだと思ったら、途中でもたもたすることに躊躇して、読み終わらないといけないと思ったのでした。
 旦那さんがいずれ無人島からいなくなってしまう、と書かれているところ、旦那さんがひとりで飲みに行ってくると出かけたところ…文字を追いながら、山本さんが作家さんであることが端々からわかりました。なんというか、ハッとするというか、ことばにぎゅっと掴まれる、というか、そんな感じです。
 読みながら、泣きそうになったのですが、涙が目の端に溜まる感覚はあったものの、実際に泣くことはありませんでした。
 
 余命の告知を私は受け止められるのか。山本さんのように残された時間が限られているなかで、私は残された人たちに迷惑をかけずに、さまざまな事柄を整理できるんだろうか、なんてことが頭の中をぐるぐるしたのは確かです。
 
 文字を追いながら、とくに「中締め」以降のところを読んだら、自分の経験のなかにも思い当たることがあって、なんとも言えない気持ちになりました。
 何度も「ホスピス」という言葉がでてくるけど、山本さんがご自宅で他界することができたのは本当、よかったと思いました。私は病院のホスピス(緩和病棟)に行ったこともあるし、病院で人の死を見守ったことがある経験があり、山本さんが何度も「病院には行きたくない」と伝えたことにはひどく共感しました。
 
 

 
 

2024年2月18日

読書状況 読み終わった [2024年2月17日]

宮部みゆきの江戸ものは岡本綺堂の「半七捕物帳」へのオマージュだなぁ、いつもそう感じていた。この連作ものの短編集に出てくる人びと、道具立てがもれなく「茂吉親分ワールド」を作り出している。まるで、浦安にあるディズニーランドは夢の国ディズニーの作り出した世界にいると思わせるしかけみたいなものだ。
それにしても、稲荷寿司屋のおやじが一体何者なのか、気になってしょうがない。書かれていないところにまだまだワールドは広がっていくのだから仕方がないのだけど。

2024年2月2日

読書状況 読み終わった [2024年2月2日]

気軽に楽しく読めるしかけがあちこちにちらかっていておもしろく読めた。登場人物も幕末の有名人もいるし、サヨというキャラが立つように、オリジナルのキャラも立ち回るし。
この先も楽しみだ。

2024年1月26日

読書状況 読み終わった [2024年1月26日]

年の暮れからゆっくりゆっくり読んでいたわりにはあっという間に1カ月経ってしまった。
あまりに豊潤、芳醇なことばの海から感じられるリズムにゆらゆら揺られながら、心はただぷらぷか(ぷらぷら、ぷかぷか)浮いていた。こんな歌もあるんだ、こんな歌人もいるんだ、が正直なところ。
ことばにこだわっていることが意識されると、あれ、ここにはこう書いてあるけど、こうじゃないかな?と、永田さんの解釈と違う自分の些末なひっかかりが心の中に浮かんでくるのがわかり、これまたおもしろい。
短歌にもう少し接近してみたいな、そう思うことができた。ひっかかりがとっかかり。ということは、また別の役目があるかな。ぱらぱらとページをひっくり返してみたい掌編になった、ともいえる。

2024年1月23日

読書状況 読み終わった [2024年1月23日]

なんじゃこりゃ〜。これが正直な感想です。
装丁と題名になっている「近鉄」と森見登美彦氏との対談が含まれていたので、読まずにはいられませんでした。ただ、一気には読めなくて(世界観がなんともディープで)、何度も図書館から借り出しました。
「佐伯さん」は異世界から来た不思議な人、いや、魔女なのではないか…と思ったりもしました。
それよりなにより、作中の若い男性諸氏がなんとも「うぶ」で「かわいらしい」若者たちなのでした。
鹿はもちろん、「東向」の通りが奈良らしい。「生駒」が出てくるのもディープすぎます。

2024年1月15日

読書状況 読み終わった [2024年1月15日]

まずは、話の作り(語られ方)がおもしろい。

それから、このサヨという人物が「普通の」料理人ではなく、「選ばれた」「天性の」料理人であることが「妙見さま」とのやりとりからわかるところがおもしろい。

幕末という時代設定が巧妙にこの話を生かしている。ま、でも、ある意味、ファンタジー感を感じるので、時代考証とか野暮なことは考えずに読む方がいいと思うし、これからもそうしたい。
続きが楽しみ。

2024年1月9日

ネタバレ
読書状況 読み終わった [2024年1月9日]

噺家は落語を話すことを稼業にして生きていく。
師匠と弟子、という昔から続く、育てられるシステムのなかで生き抜いていく。
夢を追いかけることのしんどさが一番わかるこの世界に自分から飛び込んでいくひとの自分語りに圧倒された。

総領弟子の喬太郎の語りはまるで高座で語られる噺のよう。ひとりの「若者」の物語だった。

落語が聴きに行きたくなった。

2023年12月29日

読書状況 読み終わった [2023年12月29日]

やっぱ、喫茶といえばナポリタンスパゲッティ。おじいさんの方言が七色すぎて笑ってしまった。

2023年12月22日

読書状況 読み終わった [2023年12月22日]

河野裕子という歌人、というより、筆者の妻であり母であった女性が乳癌になったこと。そして、数年後(10年未満)他の臓器に転移が見つかり、家族と共に死を迎えるまでの日々が描かれている。

女性が乳房を失うかもしれない、と思ったとき、自分の体や気持ちがどうにもならないとき、パートナーにどう寄り添ってほしいと感じるのか、どんなふうになるのか、受け止める周りの様子も含め、赤裸々に書かれている。

夫であり、歌人である永田によって出来事は回想される。永田の苦しい述懐に、ああ、男の人ってこうなんだよな、と私が思ってしまうのは、私自身が同じような経験をしているからかもしれない。病を抱えた河野の感じた苦しみを想像するしかないのだけれど…私は、河野の怒りを制御できない様子を知り、怒りの裏にある深い絶望感、悲しみに思いをはせるしかない。

自分がある意味、闘病記のたぐい、家族が看取るまでの物語があまり好きではないんだな、と改めて気づいた。

私が現代短歌を身近に感じることができたきっかけはアンソロジーで知った河野裕子の短歌のおかげだ。斎藤史を介して知ったのが最初かな。
そのことだけはこの本を読んだあとも変わらない。これからも私の好きな、大切な、歌人のひとりだ。

2023年12月9日

読書状況 読み終わった [2023年12月9日]

おもしろかった。
はらはらしながら読んだのは、多分、北一の目線で、起こっていた出来事を見ていたからだと思う。
茂吉親分に連なる名だたる「じってもち(十手持ち)」が実は脛に傷を持つからこそ、そのお役目をしている、ということを知るあたりは、なるほど、単なる捕物帳(ヒーロー譚)ではないのだ、と唸った。
このあとも続くのかな。楽しみだ。

2023年12月4日

読書状況 読み終わった [2023年12月4日]

三部作を読み終えた。正直、疲れた。
コロナという現象が持つさまざまな側面を濃いキャラと密な設定に全て詰め込もうとしている分、読みにくく感じてしまったのは否めない。

不定愁訴の田口医師が狂言回し的に、傍観しているようで俯瞰しているところに安心した。

桜宮サーガはこのあとどう続くのか…それとも閉じられるのか…楽しみ半分、といったところだ。

2023年11月24日

読書状況 読み終わった [2023年11月24日]

実際のところ、⭐︎ 3.5なのだが、四捨五入した。
医療ドラマ好きの者としてはリアルさが感じられる現場の描写がたくさんあり、おもしろかった。
さまざまな患者に対する剣崎医師に焦点化されて物語は動くが、そのなかでも自殺を繰り返すある癌患者の話が印象に残った。また、ロボットアームによる手術の話は背筋が寒くなった。

2023年11月24日

読書状況 読み終わった [2023年11月24日]

親しみを感じるのに、なんだか遠いな、と思っていたのが馬場あきこの短歌だった。なんでだろう?と率直に感じていたので、この対談集で馬場さんの来し方を垣間見たことがその自分の中で変化の兆しになったようだ。ちょっとだけ遠さが近くなったような気がした。気がしただけかな。
文語や口語、どちらを使うか、感覚的なことが短歌を生み出すことにつながる…なんて、当たり前すぎることに改めてハッとした。
それから、この本を読んで、野々山三枝という歌人がいたことを思い出せただけでも私には儲け物だった。

2023年11月1日

読書状況 読み終わった [2023年11月1日]

恐怖と絶望しかない感じない場で、生きることに執着するひとりの男が生きることの価値を一人の女を愛することによって見出していく。
この男は最初から不思議なくらい前向きだ。
発疹チフスになったこと、タトゥ係になった経緯やギタやチルカとの出会ったこと。
ギタがラリに本当の名前を教えなかったという話が一番印象深い。教えたところで、自分の人生の終わりがいつなのかわからない(今日かもしれない)のに…。この世からナチに消されてしまう運命にある自分の名前が一人の男に記憶されることを自ら否定している一人の女の思いが絶望感に満たされているといっていい。

私は読みながら、この話はほんとにあったことなのか?それともフィクションなのか…何度かよくわからなくなった。ギタとラリの写真を見て、ああ、これは事実のなかの物語の一つなのか…とわかり、ああ、こんなことは金輪際あってはならない、と思った。

その矢先、ハマスとイスラエルの間の国際的な緊張のニュースを聞き、相互に否定し合い、排斥することの恐怖を改めて知る。2000年前から始まる排斥が原因なのか?
絶望はくりかえされるのか? ただただ恐ろしい、としか言いようがない。

2023年10月21日

読書状況 読み終わった [2023年10月21日]

図書館のYAコーナーにあった本。
「ヤングケアラー(若き介護者)」がテーマのようだったので、手にとってみた。「レモン…」なんだか明るい装丁からプラスの感情を以て読み始めたが、読み進めるに、なんともなんとも。

ヤングケアラーの当事者って無自覚だから。自分がこうされていない、って、他の人(同じような年ごろの友達)と自分を比較してみたり、でも、これが普通なのかも、って思っちゃって、苦しくなったり。

カリプソにはメイという本好き、書き物好きの友達ができてよかった。メイのママやパパ、弟くんがカリプソのことやカリプソのパパのことに気づいてくれて本当によよかった。

カリプソのパパのしんどさ、苦しみは、他人事ではなく、ああ、こういうのって、こういうことなんだな、と身近なことに起こったことを思い出し、なんだか納得したり、納得できなかったり。

私の父もお母さんの本をだいぶ捨てて、私はそれをゴミ捨て場に拾いに行った。全部は拾えなかったけど。
子どもの頃、ガラスの扉付きのお母さんの本棚は私のあこがれだった。ガラスの扉を開けて、うっとりしたものだ。

一気読みの様相だったが、読み終わった後に妙な苦しさが残った。なんだ、このしんどさは…。
なにはともあれ、小説の世界だけ、ではなく、現実世界で起こっていることに思いをはせてみることにしよう。

2023年9月27日

読書状況 読み終わった [2023年9月24日]
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