力技で見事に各エピソードが収束されていって、すべてがおさまるべきところへおさまっていくというすっきり感がすごくて、読み切った感の強いこと。逆に言うと、あまりに綺麗に片づきすぎて、余韻の幅が小さくなってしまったようにも感じた。たぶん自分の好みが、もっととっちらかった話だからなのだろうと思う。大きく3つに分けられたエピソードが、うまく物語世界を構築していて、各注の役目も果たしている。各エピソードの詳細も楽しくて、読まされたなぁ、という印象が大きい。
それにしても、すべての進化は人の好奇心なのだなとつくづく。

2024年11月11日

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読書状況 読み終わった [2024年11月11日]
カテゴリ 小説

客観的な詳細説明はなし。2 部に分かれていて、中心人物は世代が異なる。グロいエピソードもあり。造語は多いが、漢字とルビからそれっぽいものを想像することもできる。けれども、この文章に慣れすぎてしまうと、正しい漢字がわからなくなるかも。などなど、とっかかりとしての読みづらさは少なくないが、人と世界との関わりが神話のような広大さと日常の繰り返しで描かれていて、物語の推進力がすごい。読み始める前はかなり、さあ、これから伝法さんの作品を読むぞ! という気合いが必要だったが、読み始めると先が知りたくてたまらなくなり、空き時間に一気に読み進めてしまった。世界観が壮大なうえに、個人の選択の妙やすれ違い、それでも進む関係性や、その先にある情など、ひとつひとつのエピソードを堪能しきった。エンディングもまた、ここでこの物語が途切れるのかー、という切なさに満ちていて、隅から隅までよかった。素敵な読書体験でした。

2024年11月11日

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読書状況 読み終わった [2024年11月11日]
カテゴリ 小説

11 月末に神戸・トアギャラリーで開催される「三原順の空想と絵本展 in 神戸」に合わせて作成された号。ムーンライティング様から送っていただきました。ありがとうございます。北海道に行けなかったのがとても残念だったので、関西で開催される巡回展が、今からとても楽しみです!

そして、星野架名さんが逝去されていたことを、今さらながら知りました。57 歳という若さだったことを知り、驚きました。神戸の方だったのですね。リアルタイム「緑野原学園」世代だったので、ショックが大きいです。野間美由紀さんももういらっしゃらないし、和田慎二さんもいらっしゃらないし、わたしにとっての『花とゆめ』はずいぶん遠くなってしまいました。トアギャラリーでは同時開催で、1F が星野架名さん、2F が三原順さんの原画展ということなので、ゆっくりと時を遡ってきたいと思います。

2024年10月6日

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読書状況 読み終わった [2024年10月6日]
カテゴリ フリーペーパー

 「文学フリマ大阪 12」に行ってきました。今回も永子さんがスペースをとってくださり、わたしはそのお手伝いでブースに入りました。
 出店者はこれまでで最大。入場者数も最大。コロナ禍の頃は閑散としていましたが、当時が嘘のように大盛況でした。
 我らが「超短編マッチ箱関西支部」は、例年どおりの既刊と、豆本をたとう紙で包んだ永子さんの新刊、たなかの手紙型超短編集の新刊を並べました。立ち止まってくださる方は、永子さん制作の三角豆本がお目当ての方が多い様相でした。どうやら三角形という形が目を引くようでした。
 見本誌コーナーは会場とは別の部屋にまとめられていましたが、見やすくてよかったです。そちらでいくつか購入候補をチェックして、マップを片手に会場を歩きました。初めてのサークルさんで好みの作品集と出会い、ほくほくでした。
 打ち上げは「関西魂」の方がたにまぜていただき、飲み食いしながらいろいろな話ができました。楽しかったー!
 基本的にはひきこもり体質なので、人と話す機会はとても貴重でした! 楽しい時間を過ごして、エネルギー充填できました。
 いろいろなかたちで同じ場を共有してくださった、たくさんの方がたに、ありがとうございました!
 次回は来年(2025 年)初頭の「文学フリマ京都 9」に出店予定です。次回も無事に参加できますように。

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カテゴリ イベント

[p. 156 以降]

読了。アレナスの辿った人生と、セルバンド師の辿った人生との重なり共感する部分が、本作の狂おしい熱量へと昇華したのだろうか。じっくり味わって読むのがつらいほどに過剰な部分もあり、どこまでも幻想へと枝葉が伸ばされていく部分もあり。実在の人物でありながら、途中から、この人は何があっても死なないのでは、と思わせられたりもした。今回は転がるように最後まで前のめりで読めた。すごかった。

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[pp. 52-155]

いろいろな形式や人称で別の側面から語り直される物語の「正しい形」はわからないまま、例えば一瞬、客観的な記述だろうと思わせられながら、その一瞬先はまた幻惑のエピソードになっていく。完全なほら話として楽しむに徹することができないのは、その一側面の部分が確かにいずれかに存在したものであることもまた事実だからだろう。けれども、次から次へと重ねられていく大仰な話に圧倒される楽しみがあるのは間違いない。性的エピソードの描かれ方については、その指し示すものについて、いろいろと考えさせられる。スペインを越えてフランスにたどり着いたところまで。

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[p. 51 まで]

何度も手に取っては読み切れずに挫折する、を繰り返していたのだけど、久々に頭が小説読みモードに入れたっぽいので、あらためてイチから読み始めることにする。冒頭から断章が視点を違え書式を違えて語られていく。内容には不可思議なことが多く、事実として信じるに足るとは言えないが、ひとりの人物の足跡としての物語は確かに続いていく。幻想小説として読み進めながら、現実のうっとうしさがこれでもかと描かれているのも辿りながら、メキシコという国を、ラテンアメリカという地の歴史を思う。

2024年8月15日

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読書状況 読み終わった [2024年8月15日]
カテゴリ 翻訳小説

[16 以降]

読了。面白かったー。最後の最後まで手に汗握った。というか、本当に大丈夫なんだろうか、これ、と最後までいろいろばくばくした。いろいろと落ちもついて、最後まで読み切れてよかった! 楽しい読書時間でした。

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[15 まで]

たぶんこれは完全にわたしの個人的な好みなのだけど、主人公がひとりで活躍する話よりも、チーム戦のほうが好み。そんなわけで、下巻に入ってから俄然楽しく読み進めていたのだけど、15 章まで来て頭を抱えた。そうくるかー! ひとりの肩にのしかかるには重すぎる責任。それでもなんとかなるんだろうなとは思っていても、なんとかしてー! と願ってしまう。切り抜けるにはどれだけの精神力が必要なのか。

2024年8月15日

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読書状況 読み終わった [2024年8月15日]
カテゴリ 翻訳小説

[p. 174 以降]

読了。動的平衡というのが、この方が世界を見る/読むときの軸になる考え方なのだろうと思う。科学的な考え方もつ人であれば同じ結論にたどり着くものである、という示唆を知人からいただいたことがあるが、やはりそれはシンプルな話に限るもので、ものの考え方というのは、自身にとっての軸というものに左右されるのではないかと思った。

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[pp. 112-173]

読みやすいしわかりやすい話なのでさくさくと読める。とそこへ、Kindle デバイスの話が出てきた。まだ日本語版はない時代の話。紙の辞書と電子辞書とについても言及されており、時代の流れを感じる。随分と昔の本だっただろうかと単行本の奥付を確認してみたところ、2010 年。連載されていたのがその直前と考えると、約 15 年前ということになるのか。今や書店の数は減り続け、出版文化も変化してきた時代。当時と今とでは作業用のツールも随分変わってきているんじゃないかなとぼんやり考えてみる。でも自分はこの本に関しては単行本で読んでいるので、時の流れはまだらだなぁと思う。

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[pp. 74-111]

いろいろと悪いことが続いて重なり、部屋にひとりでネット相手に SNS を含む読み物などを読んでいると、どんどん自分の至らなさに頭を抱えてしまい、世の中の人たちはこんなに皆素晴らしいのになぜ自分だけがこんなに駄目なのか、などと解決しようのない物思いに苛まれてやりきれなくなるのだけれど、動的平衡を考えた途端に、いま自分の吐いている CO2 もまわりまわって誰かの役に立っているのだから、生きている意味はある、などと意味なく楽観的になり、元気が出てきてしまった。底に非難や冷笑がにじんで見える読み物であれば、こうはならなかったのではないかと思う(そういう読み物すべてに意味がないわけではない)。感謝ひとしおです。その直後に、入試問題やご著作のミスの話が出てきて、ひゅっと背筋が冷えた。印刷物や受験に関わるものであれば、修正の責任は大きそう。ネットの情報も誤報を完全に止めることはできないので、どちらが厳しいのだろうと考えてみる。今ならどちらがということもないのかな。いずれにせよ文章の力というのは大きい。

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[p. 73 まで]

短めのコラムがまとめて収載されている本。学校の教科書にも掲載されているらしい。読みやすくて、自分の世代的にもわかるわかると思える話が多く、さくさくと読み進めている。全体的には、昆虫少年が生物学博士になるまでの人生の断片が切り取られており、なかなかすごい体験もされている。そのひとつひとつについて、同じ経験をした人は少なくなくても、これらすべてが合わさってやっとひとりの人物になるのだと思うと、そのときどきの人の選択のありようを考えさせられる。それぞれ面白いエピソードなのだけれども、「光陰矢のごとし仮説」では、ふむふむと読み進めたあと、仮説かよ! とつい口に出してしまい、笑ってしまった。少年や若者の可能性の大きさに思いをはせながら、たどり着いた今現在の積み重ねの尊さも感じられる。

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読書状況 いま読んでる
カテゴリ エッセイ

[第三十六-三十九章]

第二部の最後まできて、やっと全体の絵図が見えた。ここにくるまでに長い物語が積み重なってきたこと。大いなる重い遺産だったのだ。次章から新章突入。どう動いていくのか、興味津々。

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[第三十五章まで]

下巻に突入。冒頭いきなり「ハムレット」で、自身が並行読みしているのもあってタイムリーだった。お姉さんにいびられていた頃はとうの昔になってしまい、懐かしく思ったりした。

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読書状況 いま読んでる
カテゴリ 翻訳小説

[ハムレット:第四幕]

オフィーリアの最期。初読から大分経つし、繰り返し何度も読んでいる話なのだけど、オフィーリアという人物のことがわかると思ったことが、実は未だに一度もない。絵画でもとても有名な場面なのだけど、いつも、え? なんで? という気持ちでいっぱいになる。芝居で観ると悲痛さがわかるのだろうか。この役をやられる役者の方のすごさを思います。
話的には、復讐に復讐が重なり、悪い方向へ転がっていくところ。悲劇の悲劇たるゆえんだなぁと思いつつ。

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[ハムレット:第三幕]

名場面てんこ盛り。忘れてしまっていたエピソードもあって、楽しく読みました。くだんの台詞は、生きるべきか死ぬべきか、ではなく、在るか在らざるか、という感じの訳でした。元もとはどこで読んだんだっけ? と思い返したりしていたのですが、いちばん最初はCMだったり、弓月光さんのマンガだったりのような記憶もあったり。内容はわからないまま台詞だけ覚えたとか、そんな感じだったのかも。
別の場面ではオフィーリアがいきなり深みのある人物になっていたりとかもあって(『ガラスの仮面』のエチュードのシーン)。オフィーリアは読んでいるだけだと本当につかみづらい人物だと思います。

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[ハムレット:第二幕]

遠い過去の物語だとしても、現代の機微から遠い物語というわけではなく、人は時代を超えてもそう大きくは変わらないのかと思ったりする。そのなかで、いつ読んでもざわざわするのが、オフィーリアのありよう。この人の自我はいずこにあるのだろうと、読み返すたびに不思議でならないのだけれども、こういうありようもまた実際にあったことなのかもしれない。一側面であるだろうとはいえ。

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[ハムレット:第一幕]

結局、我慢できずに読み返すことにした。第一幕は若者ハムレットへの指針というか小言というかが満ちていて、こんな話だったっけと、久しぶりに読んでたいそう驚いた。そして最終的には父親の復讐をするようにと当の父親の亡霊にせがまれると。それで最終的に悲劇になるんだよね? これはかわいそう。周りに気のよさそうな人たちもいるのに、止められないのか…… 王子の悲劇…… あと、死後一ヶ月で再婚したら貞操が疑われるのは、流れ的にはわからなくはないのだけど、別にそれぐらいはとも思えてしまう現代人。

それはそうと。ハムレットは当人だけの名称ではなかったことに、初めて気づきました。びっくりだ。

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読書状況 いま読んでる
カテゴリ 翻訳戯曲

[第二十六章以降]

エステラに焦点が合わさって、上巻終わり。エステラの姓確認。このあと大きな流れがあったりするのかな。

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[第二十一-二十五章]

ロンドンでの生活。期待ほどではなかったようで。
ウェミックの公私の切り替えエピソードが面白い。

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[第二十章]

本章から第二部。舞台はロンドンへと変わる。穏やかならぬ雰囲気というか、殺伐とした感じの幕開け。

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[第十六-十九章]

タイトル通りに走り始めたところで第一部終わり。ここまで割と長かった印象がありました。この時代のイギリスということで、お金のあるなしや紳士であるやいなやというあたりは、いま自分が考えている以上の隔たりがあったのだろうなと想像。それと同時に、扱いが変わったり同じようには変わらなかったりする周囲に、いつの時代でも、と思ったりもしました。とりあえず旅立ち。なんとなく暗いイメージが見えているように感じるのですが、この先はどうなるのかな。

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[第十一-十五章]

わちゃわちゃとにぎやかでうるさい人たちのエピソードに振り回されているうちに、冒頭のエピソードが遠のいていたところへ、いきなりの驚きの展開。何があったのか。

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[第六-十章]

第十章になって、脱獄囚のエピソードが戻ってきた。ふわふわと別の日常的エピソードが流れていたときに不意に現れたので、印象が強い。それにしても、ジョーとの仲の良さ。

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[第五章まで]

日高八郎訳なので、おそらく底本は『世界の文学』中央公論社、1967 版。グーテンベルク 21 版は書誌情報がはっきりと記されていないようなので、フォローされるといいなと思います。

そんなわけで、実に今さら『大いなる遺産』。実はちゃんと読んだことがない。重そうな話でかなり量もあるしで、若い頃はディケンズを敬遠してしまっていたので。電子版はちょっと覗く形ですぐに試せるのでありがたい。勢いで試し読みをしてみたら考えていたよりもずっと読みやすかったので、即ダウンロードした。ここまではコメディチックにすら読める。人物像がはっきりしているので、ドラマとしてもわかりやすい。さくさくと読み進めて、続きも読むに決定しました。結構こういう、読まず嫌いの大作がいっぱいあるので、ぼちぼち読んでいけたらいいなと思います。

それにしても、昔は子どもの数が多かったからか、子ども像自体が今とはまったく異なることもあるのだろうけれども、本作に限らず、ひどく扱われる子どもの描写がとても多かったように思う。自身が幼かった頃は、特に引っかかりも覚えずに読んでいたのだけれども(実際、ひどく叱られたりそれなりの罰を受けたりするのは、自分の日常でもあったので)、いま読むと心が痛い…… 結構な数の子どもが死ぬ描写もあったりするのだけど、実際、日本でも今と比べると子どもの数はとても多くて、大人になれない子どもの数も多かったわけで。なんだかんだで自分の幼い当時は近代と地続きだったのだなと、現代の視点で思わされたりもする。

2024年8月12日

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読書状況 読み終わった [2024年8月12日]
カテゴリ 翻訳小説

読了。PDF 版で読みました。小説が掲載されている前半は、スマートフォンでちまちま読んでいたのですが、後半は画面の狭さに集中力が途切れてしまい、読み切るまでにはちょっと間があいてしまいました。結局タブレットで読み返しました。ディスプレイサイズ大事。

「Kaguya Planet」は自分にとってはチャレンジングな作品にたくさん出会える場というイメージだったのですが、本誌もその期待に応じてくれるものだと思います。すでに「パレスチナ」特集の次号が出ているので、気持ち新たに読み進めていきたいです。

2024年8月11日

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読書状況 読み終わった [2024年8月11日]
カテゴリ 雑誌

[p. 254 以降]

 読了。時間軸が重なることで、舞台となっている学院と寄宿舎の姿が立体的になり、ふわふわとした存在に一本筋が通って、実体を伴う場としての存在感を得たように思った。思えば最初から、生徒にだけ焦点が合わせられた話ではなかった。最後まで少し異世界を覗くように感じながら、それぞれの身内にある痛みを生々しく思いもする、螺旋系の読書体験でした。

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[pp. 153-253]

 夏に負けて体調を崩し、休止期間が思わぬ長期にわたってしまったのだけど、続きを。相変わらず登場人物たちは重いものを背負っていて、気軽に読み進めるにはちょっと力が要る。最終話の第四話「花の繭」がいちばんミステリ仕立てなのかな。寮内の見取り図などが出てきます。

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[p. 152 まで]

 きらきらした女の子たちの話かなと思って読み始めたところ、主人公たちが存外に重いものを背負っているエピソードが続いて出てきたので、読みながら息を吐いて背筋を正してしまった。14歳でセックス・ピストルズを聴くというので、いつ頃の時代が想定されているのかなと考えたりもしながら、逆に今なら音楽は時代に左右されずに聴くものかもしれないと思う。自身の中学生時代を思い出して、なんとなく腑に落ちたりもした。
 そんなわけで、軽いミステリ風味だけど、真摯に日々を生きている人たちの話でした。第三話に入ったところで小休止。力をためて後半に臨みます。

 影響を受けて久しぶりにセックス・ピストルズを聴いたところ、めっちゃBOOWYの音を思い出した。当時の洋楽の影響の強さを思います。こんなにつながりが見えるものなのだなとあらためて。当時は並行して聴いていたものね。こんなところにも時代の奥行きがある。

 本は著者の宮田さんが恵贈してくださったものです。きらきらしたサイン入り! 嬉しいです! 大事にします!
 最近は小説は電子書籍で読むことが多かったので、小説本の造形の素敵さにあらためてやられている。装丁が綺麗! ページが薄くて本が軽い! 本という物理的な物自体が高級品になりつつあるのかなと感じました。

2024年8月4日

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読書状況 読み終わった [2024年8月4日]
カテゴリ 小説

何年ぶりだろう。単行本はいったん手放してしまったので、あらためて電子版で読もうと思います。

初読時は『源氏物語』というもののあらすじを追うことに気が入っていたし、当時はなんだかんだできらきらしい話というイメージに固着されていたけれども、あらためて読み返して、いやー、つっこみどころ多すぎるな! という展開でした。光の君が御簾のなかに入り込んだり、情人を抱えて連れ出したりするたびに、なにやってんねーん、あほやろー、ひでー、などなどと、リアルでつっこみ入れまくり。全10巻のまだ1巻目なのに、もう何回つっこみを入れまくったことでしょうか…… でも、貴族の世界で繰り広げられる最上位のイケメン殿上人の浮名の多い恋愛譚、というところのみに絞り込めば、確かに少女漫画を含む女性向け漫画の恋愛譚とはとても相性がよいのですよ…… たとえ中身は変わっていったとしても、時代が変わっても、愛でられるものは大きくは変わらなかったりするのかな。

本作は完全版で、巻末に大和和紀さんの制作秘話が入っています。作画の上でのご苦労などを拝読し、今現在、平安ものやそれを下敷きにした漫画が量産されているのを楽しめるのは、こうしたご苦労の上に成り立っている時代なのだろうなと、うなずかれました。十二単を自ら身につけてあらゆるポーズで写真を撮られたくだりとか、見えないものを絵にされる方のご苦労のすごさを垣間見たように思いました。

それから、光の君の無自覚なマザコンぶりについて! 自分は単純に桐壺への思慕を藤壺にセクシャルに重ねて、ぐらいの単純な読み方をしていたのですが。いや、確かにそれどころじゃなかったですね。光の君はそれにとどまらず、女というものにすべて母を求めてるんだ! という気づきの辛さよ…… 年の離れた自身が育てた紫の上に至ってさえもですよ! 酷い。酷すぎる男ですよ……

などなどと、『源氏物語』は光の君の「酷さ」を、実に困ったもんだとくさしながら読むのが味わいなのだろうなと、今現在の自分は思ってます。とはいえ、一気に読むと眉間のしわが酷いことになるので、ここでいったん小休止を入れます。後半はこんなふうにドライなつっこみを入れて笑って済ませられるような話ではなくなっていきますしね…… 光の君と頭中将の意味のない張り合いぶりを楽しんで読んで笑っていられるのも今のうちです……

2024年8月2日

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読書状況 読み終わった [2024年8月2日]
カテゴリ 漫画

[新続金色夜叉]

 思い立って読了した! やっと読了した! 悔いはないけどしんどかった!
 そして、みんな年を重ねて至ったところがここかー、という、どうしようもなさで脱力気分がいっぱいです…… おそらくこの巻は第三章の途中で筆が途切れたと思われ、すごいところで未完です。だがしかし、これだけは断言できる。気持ちがすさんでいるときにこの巻を読んではならぬ! うっかり心情が同期したりしてしまったら、世をはかなんで死にたくなるよ! ひっじょーによろしくないです! これ、最後まで新聞に掲載されていたのかな。だとしたら本当に当時の新聞酷い。お涙頂戴の悲劇ということなのかもしれないけど、そこを軽々と超えて、生きる意味がなくなっちゃってるよ。言うて、元は単なる気持ちの行き違いによって別の人と結婚しただけのことであって、そのあとも愛憎に苛まれって、確かに誰しもが経験することではないかもしれないけど、割とよくある話だと思うのですよ。そして通常はここまでどろどろにはたぶんならない! なぜにここまで引きずるかなー! 気持ちわかんなくない部分はありますよ? だからなおさら、落ち込んでるときの夜中とかに読んじゃいかん! なんだかんだで寛一には様子伺いしてくれる人がいるんじゃんー! はっぴーじゃんー! とか、見当違いの文句もつけたくなるのでした。
 いや、それにしても、これで未完かー。読み切れたのはよかったし、面白くはあったのですが、もうちょっとなんとかなってほしかったという気持ちはやはりどうしてもあります。でも、当時あがめられていた「純粋さ」というのは、今現在とは違って、こういうどうしようもなさを抱えたものだったのかもしれないなとは思いました。それにしても……(エンドレス)

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[続続金色夜叉]

 ろくな男がいないな! 狭山も富山も寛一も、もう駄目も駄目もこれ以上ないぐらいにどうしようもない駄目男たちなので、愛子はそのうちの誰の言うことも聞かずに、自身の考えで好きなようにひとり立ちすればいいと思うよ! まぁ、できない事情はあるだろうけども。でも、狭山は駄目だ、狭山は。ここで助けられたとしても、後のちずっとお金の苦労がついて回るのが目に見えている。富山も金さえあればあとはどうでも大将と思っているあたりが最低だし、寛一に至っては、女に対する勝手な幻想を他者に見出して押し付け、いつまで経っても宮と別れた当時の自分の幼さを反省できないどうしようもないぼんくらでございますことよ…… それを「愛」という言葉ひとつでいい話にしないでいただきたいー。愛子の言わんとしていることがいちばん地に足が付いてると思った。なかでも狭山は最悪なので、愛子はとっとと狭山を見捨ててひとりとんずらすればよいよ! 口を糊する手段さえ見つかればねぇ。ほんと女ってだけでこういう扱い…… ぶつぶつ。それで、このエピソードだけで続続は終わりなのか! 情ばりばりで、リーダビリティがめちゃくちゃ高いので、読んでいてとても面白いのだけど、本当に…… なんというか…… これ、当時、泣かせる話だったんだろうか。いま読むとかなり苦笑が……
 さて、残すは新続ばかりなり。読み終わっても未完だけど、最後まで読むよ! どの辺で話が途切れたのか知りたい!

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[「続金色夜叉」第六-八章]
 なんという芝居調。第八章がすごすぎて、もう舞台に立った寛一が見えた。なんなら、エンディングでは会場割れんばかりの拍手に、役者寛一の名を叫ぶ観客の声まで聞こえた。と思うほど、芝居調。盛り上げて盛り上げて盛り上げてわかせる。現在の小説なら、ここまで芝居がかった仕掛けはできないんじゃないかなぁと思った。漫画の演出としてなら、最高潮にすごくなりそう。
 そして、それがわかる演出ではあったのだけど、やはり最後...

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2024年8月1日

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読書状況 読み終わった [2024年8月1日]
カテゴリ 小説

農林水産省の発行する雑誌、というか、フリーペーパーなのかな。読者対象はZ世代~子ども向けのような印象です。ブラウザやKindle, Koboなどで読めるようです。

2024年8月1日

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読書状況 読み終わった [2024年8月1日]
カテゴリ 雑誌

まずは上巻のみ読了。読みやすくてサクサク読めるのだけど、どうにも主人公の性格が今の自分には馴染まなくて困った。読み進めたらそのうち前のめりになれるような部分も出てくるのかもと思いながら読んでいたのだけど、下手したらこの状態のまま上巻が終わってしまうのではと、ちょっと遠い目に。だが、そこまでの成り行きが唐突に方向転換させられる事件が起きて、俄然前のめりになった。下巻の流れがめっちゃくちゃ気になるので、続きもどんどん読んでいきたい。

2024年6月26日

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読書状況 読み終わった [2024年6月26日]
カテゴリ 翻訳小説

 「開園100年のあゆみ展」開催中の京都府立植物園に行ってきました。北山門から入って、園内をぐるりと歩き、寄り道をしながら北泉門から出るコース。水琴窟や水車を見て、絶滅危惧種園・中国植物園を見て、四季彩の丘を眺め、観覧温室を通り、未来くん広場を横目で見ながら、植物園会館で「開園100年のあゆみ展」を観て、お土産を購入して休憩し、ばら園と沈丁花壇を通り、あじさい園をぐるりと見ました。堪能しました! 嬉しげにぱしゃぱしゃと写真を撮りながら歩いていたのですが、あっという間にバッテリーが切れてしまい、観覧温室の途中で写真が撮れなくなりました。残念…… でもゆっくりと歩きながら、とても楽しんできました。

 「開園100年のあゆみ展」はこぢんまりとした展示だったのですが、期待以上に面白かったです。駐留軍に接収されて、家が建てられて町並みが形成されていた時期があったとは! まったく知りませんでした。今の植物園は、駐留軍からの返却後に市民からの意見も募り、あらためて復興させたものだったのだと知りました。よくここまで育てられてきたものだと感じ入りました。今や町中の森ですよ。戦前の地図もあり、当時はプールや、京都大学の観測所などがあったことも知りました。へえええー。とてもよかったです。

 お土産に、よさげなデザインだったので 100 周年記念の T シャツを購入しました。ついでに、薔薇羊羹というのも買って食べてみました。めっちゃくちゃ薔薇でした! 歩き疲れた最中の甘い羊羹は身体にしみて、ほっとしました。次はジェラートを試してみたいと思います。

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カテゴリ 博物館

 恵文社一乗寺店で本を買うついでに立ち寄りました。キャンパスのなかにおさめられたのは深い色合いの鮮やかな色をもった、いろいろな形の図形や生き物たち。生き生きとした光をもった色彩を放つ数かずの絵が並べられていました。会場には立体の作品もいくつか置かれており、会場にいらっしゃった鈴木さんご本人にお聞きすると(お相手してくださり、ありがとうございました)、絵画教室で子どもたちと一緒に作っている作品なのだと。使用されているのは古新聞や厚紙。ちょっとした仕掛けのようなものもある、とても楽しい展示でした。全体的に明るい色調で、この季節にぴったりの内容だなと思いました。楽しませていただき、ありがとうございました。

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カテゴリ 展覧会

2024 年に旧尾崎テオドラ邸のギャラリーにて開催された「三原順の空想と絵本展」のパンフレット。三原順さんの思索も思いもびっしりで。そうでなくても興味を引かれる絵本の案内がびっしりで。あぁ、やっぱりなんとしても行くべきだったと、あらためてため息をついています。そんな気にさせられるぐらい、丁寧に作成されているパンフレットで、行けなかった自分にも楽しみ満載の内容でした。今さら新たに目を開かされる情報があったりも。丁寧に三原さんの跡をたどられている立野さんだからこその作だなぁと、あらためて感じ入りました。宝物のひとつとして大事にしたいと思います。通信販売のご対応をありがとうございました。

2024年6月19日

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読書状況 読み終わった [2024年6月19日]
カテゴリ パンフレット

旧尾崎テオドラ邸オープンと「三原順の空想と絵本展 2024」開催に先立って作成されたペーパーで、開催前の周辺事情を知ることができました。「ぬりえ美術館」の顛末を初めて知り、残そうとする動きとそれを可能にしてきた力は、どこかにつながっていくものなのだなと強く思いました。札幌店での幼稚園の子どもたちの経緯も、とても微笑ましくて、なんだかわたしも嬉しいエピソードでした。

2024年6月17日

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読書状況 読み終わった [2024年6月17日]
カテゴリ フリーペーパー

ムーンライティング様発行のフリーペーパー続き。

『となりのうま と おとこのこ』という絵本を挟んで、『はみだしっ子』と木村みのりさんの漫画がつながっていたとは! 当時、とても印象に残る絵だったのだろうなと思うと同時に、当時の漫画家の方がたの感性のつながり方がすごいなと感じました。

X デーの考察も興味深かったです。日付を細かく追って設定の確認ができるのは、三原さん漫画の醍醐味だなぁと思います。

2024年6月17日

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読書状況 読み終わった [2024年6月17日]
カテゴリ フリーペーパー

読了。タイトル通りの内容だったと思います。ある程度の年齢を重ねてくると、表現(現実)に対する違和感は表明しつつ、まずは日常生活を滞りなく過ごすために、目を閉じて通り過ぎてしまい、慣れてこざるをえなかった表現(現実)というのが実に多い。自分はずっとだんまりで過ごしてきたわけでも、それをよしとしてきたわけでもないのだけど、これぐらいのことは日常生活では普通に目にすることとして、公にはクリアされないまま通り過ぎてきてしまっていることは、どうしても多い。そうしてこないと、実際のところ、日常生活が困難でもありました。それでも、これまでにも少しずつ変化はあったものの、ここ数年での変化はとても大きくて、慣れきってしまってきていた自分などは、逆に取り残され感がとても強いほどになってきているように感じています。多かれ少なかれ表現に携わる(少なくともこういうものを書いて公開する)者にとっては、表現の問題には対峙せざるをえない。そういう意味では、この本は、年を重ねてきてしまった私たちに真っ直ぐに向けられている内容ではないかと思いました。

創作と報道とはまったく同じ立ち位置ではないのではないかとは考えています。創作はどこかに軸足を置いて、何かを傷つけざるをえない表現方法だと自分は考えているところがあって。もちろん、そうではない表現方法もあるし、そうなるべきなのかもしれない。でも、自分に刺さってきた作品はどうしてもそういうものだったし(自分が傷つけられるものも含めて)、自分が指向する作品も今現在もそういうものです。何かを書くときにはずっと責任と覚悟について考えてはきたつもりだったけれども、足りなかったし足りていないのではないかと、創作に向き合うたびにずっと考えています。間違ってきたことも含めて。そういうときに、自分の向いている方向について、思慮するための助けになるための内容だと思いました。わかりやすく、この表現はこういうふうに言い換えましょう、といったハウツー本ではない。そういうパートがないわけではないけれども、自分にとってはそうした小手先のことよりもずっと、自分に反映させられてくるものがあった内容でした。

似た背景をもつ男性の多いメディアという社会のなかで、いろいろな形でたたかってこられてきただろう、自分と同世代の女性をはじめとした方がたのことについても、あらためて、いろいろなことを考えました。自分は自分的に楽な道を選んできてしまったけれども(他者から見るとわたしの選択もたぶん何らかの困難に満ちているだろうことはおいといて)、軸足を置いたまま、少しずつ風穴を開けようと努めてこられて、その結果がこの本に結実しているのだと考えると、本当にすごいことだなと思うのです。自分がそれだけの年齢に達しているので、余計にそう感じるのかもしれません。

2024年6月16日

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読書状況 読み終わった [2024年6月16日]
カテゴリ 社会

[p. 161 以降]

読了。言葉と暴力の示すところとその足りなさについて考える。それは自分の知識や思索の外側にあるものを見せると同時に、切り取った瞬間に見えなくさせられるものもカウントできないほど大きく存在することになる。断言することで消えるものと、そうすることの怖さを考える。結局、自分などはただいつまでも悩み続けるだけなのだろうけど。それでも、言葉でしかつなげられないものの大きさは厳然とある。

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[pp.107-160]

小田原のどか「おまえはよこたわっている」。ここまで読んできていろいろ思索してきたことから、斜めの方向に新たな切り口を見せられた印象があった。利用される有名人と、展開するアーティスト側の視点。それは自分と重なる視点ではなく、けれども、だからこそ、重い意味を持っているように感じた。

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[p. 106 まで]

ちびちびと読み進めている。執筆者それぞれの背景の違いにともない、同じ情景を見て考えられたことであり、似た円をぐるぐる回っているように見えて、その視線は少しずつ異なっている。そのなかには、自分が何度も目にし、自分自身も考えてきた思考に近い内容のものもあれば、自分があまりつながりを理解しきれていなかった物事との関わりのなかで語られているものもある。どこかに足をおいて考えるには、自分の足もとが揺らぎすぎてはいないかと、あらためて我が身を省みる起点となっている。少し時間をおいて、正確には二年近く経ったいま、当時の文章に触れることに意味があるのではないかと考えている。

2024年6月15日

ネタバレ
読書状況 読み終わった [2024年6月15日]
カテゴリ 社会

原作をもとにしたオリジナル作品で、日本語版と英語版の双方がセットで入っています。平易な文章で、途中の冒険もかなりはしょられているっぽいので、サクサク読めて、あっという間にエンディングです。英語版も平易な文章なので、日本語版→英語版の順に読むと、読み取るのに難はなかったです。ふだんから英語をガツガツ読んではいない人向けになるのかなと思います。サイトを見てみたら、そもそも企画としてはオーディオブックで、テキストはそれに応じて、他の言語版もそのうちに、ということのようです。いろいろな試みがあるんですね。

2024年6月10日

ネタバレ
読書状況 読み終わった [2024年6月10日]
カテゴリ 翻訳小説
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